適応障害で傷病手当金を受け取ること自体は、転職や再就職に直接の不利を生みません。健康保険の受給記録は転職先や一般には開示されないからです。ただし通算1年6か月の上限を使い切ると同じ病気の再発時に残りが少ない、住宅ローンの団信告知で休職中・受給中が影響しうる、といった現実的な注意点はあります。気をつけるべき点は「上限の使いどころ」「空白期間の説明」「他の保険の告知」の3つに絞られます。
適応障害の傷病手当金で本当に気をつけるべきデメリットは5つ
適応障害で傷病手当金をもらうデメリットとしてよく挙がるのは、次の5つです。まずここだけ押さえれば大筋は足ります。
- 通算1年6か月の上限を使うと、同じ病気の再発時に残り期間が少ない
- 休職や離職の期間が職歴に空き、転職時に説明が必要になることがある
- 住宅ローンの団体信用生命保険(団信)で、休職中・受給中が審査に影響しうる
- 新しく生命保険・医療保険に入るとき、傷病歴の告知でうまくいかないことがある
- 受給中も社会保険料・住民税の支払いは続くため、手取りは満額より目減りする
逆に「会社にバレて転職で不利になる」「もらうと履歴に傷がつく」といった不安は、誤解が混じっています。次から1つずつ事実を確認します。
傷病手当金をもらっても転職・再就職に直接の不利はない
傷病手当金を受け取ったという記録が、転職活動で直接マイナスに働くことはありません。傷病手当金は加入している健康保険(協会けんぽや健保組合)が支給するもので、その受給記録が転職先の会社や第三者に自動で開示される仕組みはないからです。健康保険の被保険者記録は本人と保険者のものです。
転職先に伝わりうるのは、源泉徴収票や年末調整の場面ですが、傷病手当金は非課税なので源泉徴収票には載りません。傷病手当金と税金の扱いも整理しておくと安心です。
ここで分けて考えたいのが「受給記録」と「休職期間」です。受給そのものは見えませんが、後述するとおり休職や離職で空いた期間は職歴として残ります。デメリットの本体は記録ではなく、空白期間の説明のほうにあります。
通算1年6か月の上限を使うと同じ病気の再発時に残りが減る
傷病手当金が支給されるのは、同じ病気・けがについて通算で最長1年6か月までです。ここでいう通算とは、令和4年(2022年)1月以降の制度では、途中で復職して支給が止まった期間を除いて、実際に支給された日数を積み上げて1年6か月という意味です(厚生労働省・傷病手当金の支給期間の通算化)。
注意したいのは、上限を一度使い切ると、同じ適応障害が再発しても残り日数が少ない点です。短期間で復職できそうな見通しがあるなら、将来の長期療養に備えて支給期間をあえて残す判断もあります。詳しくは傷病手当金の支給期間(通算1年6か月)を参照してください。
一方で、いったん完全に治って社会的に回復した後、別の機会に発症した同じ病名なら、改めて受給できる場合もあります。線引きは医師の判断と保険者の確認が前提です。同じ病気で2回目に傷病手当金をもらえるかで具体例を確認できます。
休職や離職で空いた期間は職歴に残るので説明を用意しておく
傷病手当金の受給は見えませんが、休職や退職で働いていない期間は職歴として残ります。転職の面接で空白期間を聞かれることはあるので、説明の準備はしておきたいところです。
ただし、病名を細かく話す義務はありません。「体調を整えるため一定期間療養していた」「現在は回復し就労に問題ない」と、回復していて働けることを軸に伝えれば十分なケースが多いです。応募書類への病歴記載も義務ではありません。
むしろ危ないのは、空白を隠そうとして経歴を偽ることです。後で経歴詐称と扱われるリスクのほうが大きいので、空白は事実として認めたうえで、回復状況を前向きに添えるほうが無難です。
住宅ローンの団信告知では休職中・受給中が審査に影響しうる
住宅ローンを組むときに入る団体信用生命保険(団信)は、契約者が亡くなったり高度障害になったりしたときローン残債を保険でゼロにする仕組みです。この加入時に健康状態の告知があり、「直近の通院・服薬」「休職中かどうか」を問われることが一般的です。
適応障害で休職中・傷病手当金の受給中だと、告知の内容によっては団信に加入できず、結果として住宅ローン審査が通りにくくなることがあります。これは傷病手当金そのもののペナルティではなく、団信という別の保険の告知の話です。
同じ理由で、新しく生命保険・医療保険に入る場合も告知でつまずくことがあります。加入拒否のほか、保険料の割増、特定の部位・疾患を一定期間保障対象外にする条件付き加入になることもあります。すでに入っている保険には影響しません。住宅購入や保険加入の予定があるなら、療養が落ち着いてから動くと、加入できる商品の幅が保ちやすくなります。
休職中も社会保険料と住民税は払うので手取りは目減りする
傷病手当金は「標準報酬日額×3分の2×日数」で計算します。標準報酬日額は、ざっくり言うと社会保険料を決める基準になる平均月収(標準報酬月額)を30で割った1日あたりの額です。つまり受け取れるのはおおむね給与の3分の2で、満額ではありません(全国健康保険協会・傷病手当金)。
さらに、休職して給与が止まっても、健康保険料・厚生年金保険料・住民税の支払いは続きます。会社が給与天引きできない分は、会社が立て替えて後で精算するか、自分で振り込むかになります。結果として、手元に残るお金は3分の2の支給額からさらに目減りします。
なお傷病手当金自体は非課税なので、所得税・翌年の住民税の計算には入りません。計算の内訳は傷病手当金の計算方法と早見表で確認できます。書類のやり取りや会社との連絡が負担なら、申請を専門家に任せる手もあります。
デメリットより受け取らない損のほうが大きい場面が多い
ここまでデメリットを並べましたが、整理すると多くは「上限の使いどころ」「空白の説明」「別の保険の告知」の話で、傷病手当金を受け取ること自体の罰則ではありません。療養に専念するための生活費を確保できるメリットのほうが、実際には大きい場面が多いです。
| 気になる点 | 実際のところ |
|---|---|
| 転職・再就職への影響 | 受給記録は開示されない。直接の不利はない |
| 会社に病状が伝わる | 申請で休職の事実は伝わるが、転職先には共有されない |
| 同じ病気の再発 | 通算1年6か月の残りに注意。使い切りに気をつける |
| 住宅ローン・新規保険 | 団信や告知で影響しうる。落ち着いてから動くと無難 |
| 手取り | 給与の約3分の2。社会保険料・住民税で目減り |
傷病手当金は自分でも申請できます。まず主治医に相談し、勤務先の担当部署と保険者に手続きを確認するのが基本です。やり取りの負担が大きいと感じるなら、代行支援を使う選択もあります。
よくある質問
- 全国健康保険協会「病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)」 https://www.kyoukaikenpo.or.jp/benefit/injury_and_sickness_allowance/index.html
- 全国健康保険協会「傷病手当金の支給期間の通算化について」 https://www.kyoukaikenpo.or.jp/benefit/injury_and_sickness_allowance/index.html
- 厚生労働省「傷病手当金について」 https://www.kyoukaikenpo.or.jp/benefit/injury_and_sickness_allowance/index.html
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