同じ病気での2回目の傷病手当金は、初回の支給開始日から「通算1年6か月」の残りがある限り受け取れます。すでに通算1年6か月を使い切っている場合は原則アウトですが、一度しっかり治って働けていた期間があるなら「社会的治癒」が認められ、別の病気として新たに対象になることもあります。判断するのは加入している健康保険なので、まずは保険者への確認が出発点です。
同じ病気の2回目は支給開始日から通算1年6か月の残りで決まる
傷病手当金は、病気やケガで働けないときに、休んだ4日目から最長で支給される健康保険の給付です。金額のベースは標準報酬日額(ざっくり言うと直近12か月の標準報酬月額=社会保険料を決める平均月収の平均を30で割った日額)の3分の2です。
同じ病気で2回目を受け取れるかどうかは、シンプルに言うと「支給開始日から通算1年6か月の枠が残っているか」で決まります。2022年1月の制度改正で、支給期間は支給開始日から通算して1年6か月に達するまでとなりました(厚生労働省・傷病手当金の支給期間の通算化)。初回でこの枠を使い切っていなければ、同じ病気で再び休んでも残りの日数分は受け取れます。
ここでよく聞かれるのが、「1回目と2回目で待期3日をやり直す必要はあるのか」という点です。同一傷病で通算期間が継続している場合、待期はすでに完成しているので、休んだその日から対象になります。新しい待期3日を取り直す必要はありません。
枠の残りや日額の出し方は傷病手当金の支給期間(通算1年6か月)と傷病手当金の計算方法・早見表で具体的に確認できます。
復職していた期間はカウントされないので残りが復活することもある
2022年1月より前は「支給開始日から1年6か月」という単純なカレンダー計算でした。途中で復職すると、その復職期間も1年6か月の中に含まれてしまい、休んでいないのに枠が減っていく仕組みでした。
改正後は復職して給与が出ていた期間(傷病手当金が支給されなかった期間)はカウントされません。実際に支給を受けた日を足していって、それが通算1年6か月に届くまでが対象です。だから「一度復職→また同じ病気で休職」というケースでも、復職中に消えていたはずの枠が残っている、ということが起こります。
| 場面 | カウント対象か |
|---|---|
| 実際に傷病手当金を受け取った日 | 通算に含む |
| 復職して給与が出ている期間 | 含まない(枠が減らない) |
| 有給休暇で給与が満額出た日 | 支給されないため枠は減らない |
※2020年7月2日以降に支給が始まったケースから、この通算化のルールが適用されます。それより前から受給していた場合は旧ルール(暦どおり1年6か月)です。
通算1年6か月を使い切ったら原則もらえない
初回の支給開始日から数えて、実際に受け取った日が通算1年6か月分に達すると、その病気については原則として打ち切りです。同じ病気で再び休職しても、残りの枠がゼロなら受け取れません。
「診断名を少し変えてもらえば別の病気として申請できるのでは」と考える人がいますが、これは通りません。病名が違っても、原因が同じ・一連の症状と判断されれば同一傷病として扱われ、通算1年6か月の続きとみなされます。判断するのは医師ではなく、加入している健康保険(保険者)です。
使い切った後にどうするかは、退職後の生活費の組み立て方とあわせて考える必要があります。働けない状態が続くなら、まず傷病手当金、その間に失業保険は受給期間の延長申請をしておく、という順番で進めるのが安全です。
社会的治癒が認められれば別の病気として新たに1年6か月の対象になる
通算1年6か月を使い切っていても、例外的に「もう一度ゼロから1年6か月の対象」になる道があります。それが社会的治癒です。社会的治癒とは、ざっくり言うと、医学的に完治していなくても、症状が落ち着いて通院や投薬が要らない状態が相当期間続き、ふつうに働けていた状態のことを指します。
この状態が認められると、その後に同じ病名で再発しても「前のものとは別個の病気」とみなされ、新たに傷病手当金の対象になり得ます。厚生労働省の運営する「こころの耳」でも、治癒の認定は必ずしも医学的判断のみによらず、社会通念上治った(症状もなく相当期間就業した後の同一病名の再発)と認められれば別個の疾病とみなす、という考え方が示されています。
ただし、何年安定していれば認められる、という明確な日数基準が法律で決まっているわけではありません。実務では「通院・服薬なしで、ふつうに勤務できていた期間がある程度続いていたか」が重視されますが、最終的に判断するのは保険者です。年単位での安定が目安とされることが多いものの、断定はできません。次のような材料がそろっているほど認められやすくなります。
- その期間、その病気での通院・服薬がなかった
- 休職や時短ではなく、通常どおり勤務できていた
- 安定していた期間が一定程度(年単位が一つの目安)続いていた
社会的治癒に当てはまりそうかどうかは自己判断が難しいので、加入している健康保険に具体的な経過を伝えて確認するのが確実です。
うつ病など再発しやすい病気は同一傷病とみなされやすい
うつ病や適応障害などのメンタル不調は、再発しやすいぶん、社会的治癒のハードルがやや高めに見られる傾向があります。理由は、再発までの間も通院や服薬を続けていることが多く、「症状が落ち着いて医療が要らない状態だった」と言いにくいからです。
また、前回が「適応障害」で今回が「うつ病」のように診断名が変わっても、経過が地続きと判断されれば同一傷病として扱われやすい点にも注意してください。別の病気として新たに申請したいなら、その間しっかり安定して働けていた事実が鍵になります。
休職と傷病手当金の進め方は適応障害で傷病手当金を受け取る方法もあわせて読むと整理しやすいです。やり取りが負担に感じるときは、申請を代行支援してくれるサービスに任せる手もあります。
違う病気なら別枠で新たに受け取れる
1回目とまったく違う病気・ケガであれば、それは別の傷病なので、新たに通算1年6か月の枠が立ち上がります。この場合は待期3日からのスタートになります。
たとえば、最初は腰の手術で休職して受給し、復職後に今度はうつ病で働けなくなった、というケースなら、うつ病については別枠で改めて対象です。前の病気で枠を使い切っていても関係ありません。
判断のポイントは「医学的に関連がない、独立した病気か」です。関連があると見られると同一傷病扱いになるので、ここでも最終判断は保険者になります。
2回目を申請するときの手続きと確認しておくこと
2回目の申請でも、提出する書類の種類は1回目と基本的に同じです。
- 傷病手当金支給申請書(本人記入欄・事業主記入欄・療養担当者=医師の意見欄)
- 同じ病気の続きか、新しい病気かがわかる医師の記載
同一傷病で通算期間が続いている2回目なら、待期は取り直し不要です。一方、別の病気として申請する場合や社会的治癒を主張する場合は、待期3日や、安定していた期間の経過がポイントになります。
審査から振り込みまでは申請後おおむね1〜2か月が目安です。傷病手当金は自分でも申請できますが、社会的治癒の主張や診断名が絡むケースは判断が難しいので、迷ったら保険者に確認するか、申請が不安なら専門家に任せる手もあります。
よくある質問
- 厚生労働省「令和4年1月1日から健康保険の傷病手当金の支給期間が通算化されます」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_22308.html
- 全国健康保険協会「健康保険法等の一部改正に伴う各種制度(傷病手当金等)の見直しについて(令和4年1月から)」 https://www.kyoukaikenpo.or.jp/faq/benefit/002/index.html
- 全国健康保険協会「病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)」 https://www.kyoukaikenpo.or.jp/faq/benefit/002/index.html
- 厚生労働省 こころの耳「こころの病で再休職した場合、傷病手当金を再度支給できる仕組みはあるの?」 https://kokoro.mhlw.go.jp/mental-health-qa/mh-qa007/
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