退職時に診断書を出すデメリットは?提出すべき場面と不要なケースの見極め方

退職に診断書は法律上必須ではなく、出すこと自体にも文書料の自己負担や健康状態が会社に伝わるといったデメリットがあります。一方で特定理由離職者と認められれば失業保険の給付制限がなくなるなど、出して得をする場面もはっきりしています。デメリットとメリットを並べたうえで、自分のケースで出すべきか判断できるように整理します。

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退職に診断書は必須ではないので不要なら出さなくてよい

退職を申し出るのに診断書はいりません。民法では、期間の定めのない雇用なら退職を申し出てから2週間で雇用契約は終了します。会社の就業規則に「診断書を提出すること」と書かれていても、退職そのものを止める効力はありません。

診断書が出てくるのは、おもに次の3つの場面です。会社に体調不良を客観的に伝えたいとき、休職を申請するとき、そして失業保険や傷病手当金で病気を理由にした優遇を受けたいときです。逆に言えば、これらに当てはまらないなら、無理に取る必要はありません。一身上の都合での自己都合退職なら、診断書なしで問題なく進みます。

つまり最初の判断は「診断書で何を得たいか」です。得たいものがないのに費用と手間をかけて取るのは、デメリットだけが残ります。あわせて休職の診断書の使いどころも見ておくと、休職してから辞めるか、すぐ辞めるかの判断がしやすくなります。

退職時に診断書を出す主なデメリットは4つ

診断書を出すこと自体に伴うデメリットは、次の4つに整理できます。

デメリット 中身
文書料が自己負担 診断書の文書料は健康保険が使えず全額自費。相場は1通あたり3,000円〜10,000円程度で、病院や記載内容で変わります。
健康状態が会社に伝わる 病名や症状、療養が必要な期間などが会社の知るところになります。とくに精神疾患は伝えたくない人も多い情報です。
必ずしも会社都合退職にはならない 診断書を出しても、離職票の離職理由が自動で会社都合になるわけではありません。判断するのはハローワークです。
すぐ辞められるとは限らない 会社が退職ではなく休職や配置転換を提案してくることがあります。診断書は退職を早める保証にはなりません。

転職先への告知や健康状態の不安

もう一つ気にする人が多いのが、転職への影響です。ただ、ここは誤解されがちです。前職に出した診断書の内容が、本人の同意なく転職先に伝わることはありません。履歴書の退職理由は「一身上の都合」で問題なく、病名を書く義務もありません。診断書を出したから転職で不利になる、という直接の因果はないと考えてよいです。気になる場合の精神科の診断書の扱いは精神科の診断書でも触れています。

離職票の離職理由との関係

診断書のいちばん大きな誤解が、ここです。診断書を会社に提出しても、離職票の離職区分が決まるわけではありません。最終的に「特定理由離職者」などに該当するかを判定するのはハローワークで、その判断材料として診断書を提出するのは退職後の手続きの段階です。会社に出す診断書と、ハローワークに出す診断書は、目的も提出先も別物だと分けて考えてください。

診断書を出すメリットは失業保険と傷病手当金で効いてくる

デメリットを並べたうえで、それでも診断書が効いてくる場面ははっきりしています。お金が絡む3つです。

特定理由離職者と認められれば給付制限がなくなる

自己都合で辞めると、失業保険(基本手当)は原則1か月の給付制限期間があり、その間は受け取れません(2025年4月以降に短縮)(出典:ハローワーク。ところが、病気やケガで働き続けられず退職したと認められると「特定理由離職者」となり、この給付制限がなくなります(出典:厚生労働省・特定理由離職者の範囲。判定はハローワークが行い、その際の証拠として診断書が使われます。特定理由離職者になると、受給資格の要件(被保険者期間)が緩くなる場合もあります。

これとは別に、所定給付日数そのものが大きく延びるのは「就職困難者」と認定されたケースです。特定理由離職者になっただけで300日や360日になるわけではない点に注意してください。障害者手帳の保持者や、うつ病などで就職が著しく難しいとハローワークに認められて就職困難者と判定されると、被保険者期間1年以上で所定給付日数が300日、45歳以上65歳未満では360日まで延びることがあります(出典:ハローワーク・所定給付日数。給付制限がなくなること(特定理由離職者)と、給付日数が手厚くなること(就職困難者)は別の話だと整理しておくと、見込みを誤りません。詳しい早く受け取る流れは失業保険を早くもらう方法を参照してください。

傷病手当金の医師の証明として使える

働けない状態が続くなら、退職前後に使えるのが傷病手当金です。健康保険から、標準報酬日額(おおまかに言うと直近12か月の月収の平均を30で割った額)のおよそ3分の2が、待期3日のあと4日目から支払われます。通算で最長1年6か月まで(出典:協会けんぽ。この申請には医師が「労務不能」と証明する欄があり、ここが実質的な診断書の役割を果たします。申請の手順は傷病手当の申請方法にまとめています。

注意点として、失業保険と傷病手当金は同時には受け取れません。失業保険は「働ける人」、傷病手当金は「働けない人」が前提だからです。働けない間は傷病手当金を受け、回復してから失業保険に切り替える(受給期間の延長申請をしておく)のが基本です。

休職から退職への流れを整えられる

いきなり辞めるのではなく、まず休職して傷病手当金を受け取り、回復しなければ退職する、という段取りを組むときにも診断書が起点になります。休職期間中に体調と次の動きを判断できるので、勢いで辞めて収入が途切れるのを避けられます。

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診断書を出すべきか迷ったら受け取る制度から逆算する

出すか迷ったら、感情ではなく「最後にどの制度を使うか」から逆算すると決めやすくなります。

あなたの状況 診断書 理由
体調は問題なく自己都合で辞める 不要 得られる制度上のメリットがない
病気やケガで働けず辞める 取る価値あり 特定理由離職者の判定材料になる
退職後しばらく働けない見込み 取る価値あり 傷病手当金の医師証明に必要
まず休んでから決めたい 取る価値あり 休職申請の起点になる

ポイントは、会社に出すためではなく、退職後にハローワークや健康保険で使うために取る、という発想です。会社向けには「体調不良のため」とだけ伝え、診断書はハローワーク提出用に手元に持っておく、という分け方もできます。

診断書の文書料は全額自費になるので発行前に費用を確認する

文書料は健康保険の対象外で、全額自己負担です。相場は1通3,000円〜10,000円程度。記載内容が細かいほど高くなる傾向があります。複数の提出先(会社用・ハローワーク用)が必要なら、その分の通数と費用がかかる点も見落としがちです。

  • 発行までに数日〜1週間かかることがある。退職日が迫っているなら早めに依頼する
  • 診断書には有効な目安があり、発行から1〜3か月程度を過ぎると古いと判断されることがある
  • 症状によっては医師が診断書を書けないこともある。受診すれば必ず出るとは限らない
  • 使い道(失業保険用か、傷病手当金用か)を医師に伝えると、必要な記載を入れてもらいやすい

申請のやり取りが負担に感じるなら、傷病手当金や失業保険の手続きは自分でもできますが、専門家に任せる手もあります。まずは自分でできる範囲を確認してから、無理そうなら頼る、という順番でかまいません。

診断書を出さずに退職を進める方法もある

診断書を出したくない、あるいは制度メリットがないなら、出さずに退職を進める方法があります。退職の意思を伝え、残った有給休暇を消化しながら2週間後に契約終了とする流れが基本です。退職理由は「一身上の都合」で足り、病名を説明する必要はありません。

引き止めが強い、直接やり取りしたくない、という場合は、退職届を郵送する、退職代行を使うといった手段もあります。ただし退職代行は費用の目安として3万〜5万円ほどがかかるので、まずは通常の申し出で進められないかを先に検討してください。

どの進め方でも、退職後に失業保険や傷病手当金を使う予定があるなら、その手続きで診断書が要るかどうかだけは先に確認しておくと、二度手間になりません。

よくある質問

Q. 退職時の診断書はいくらかかりますか
A. 文書料は健康保険が使えず全額自己負担で、相場は1通あたり3,000円〜10,000円程度です。記載内容が細かいほど高くなる傾向があり、会社用とハローワーク用で複数枚必要な場合はその分かかります。
Q. 診断書を出すと会社都合退職になりますか
A. なりません。離職票の離職理由を判断するのは会社ではなくハローワークで、診断書はその判定材料の一つです。病気やケガで働けず辞めたと認められれば「特定理由離職者」となり、自己都合の給付制限(原則1か月)がなくなる場合があります。
Q. 診断書を出すと転職で不利になりますか
A. 前職に出した診断書の内容が、本人の同意なく転職先に伝わることはありません。履歴書の退職理由は「一身上の都合」でよく、病名を書く義務もないため、診断書を出したこと自体が直接の不利になるわけではありません。
Q. 診断書があればすぐ辞められますか
A. 必ずしもそうとは限りません。会社が退職ではなく休職や配置転換を提案してくることもあります。退職自体は申し出から2週間で成立しますが、診断書は退職を早める保証にはなりません。
Q. 失業保険と傷病手当金は両方もらえますか
A. 同時には受け取れません。失業保険は働ける人、傷病手当金は働けない人が前提だからです。働けない間は傷病手当金を受け、回復してから失業保険に切り替えるために受給期間の延長申請をしておくのが一般的です。

参考資料

  1. 厚生労働省「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/d01-1.html
  2. 厚生労働省「基本手当について」(給付制限・所定給付日数) https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_basicbenefit.html
  3. 全国健康保険協会「病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)」 https://www.kyoukaikenpo.or.jp/benefit/injury_and_sickness_allowance/index.html

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