うつ病で退職した場合でも、医師の証明などで「特定理由離職者」と認められれば、給付制限なしで失業保険を早く受け取れます。ただし大前提として、失業保険は「すぐ働ける状態の人」に出るお金です。まだ療養が必要な間はそもそも受け取れません。そこを誤解したまま手続きすると損をするので、療養中は傷病手当金でしのぎつつ、受給期間の延長申請をしておく、という順番を先に押さえておきます。
うつ病で辞めても特定理由離職者と認められれば給付制限なしで早く受け取れる
うつ病が原因の退職は、書類の上では「自己都合」になることが多いです。ただ、体調を理由にやむを得ず辞めたと認められると、ハローワークで「特定理由離職者」という扱いになります。特定理由離職者とは、ざっくり言うと「正当な理由のある自己都合退職者」のことです。病気やけが、心身の障害などで働き続けられずに辞めた人がここに含まれます。
この扱いになると、通常の自己都合退職にある給付制限がなくなります。給付制限とは、退職後に失業保険がすぐ出ず、一定期間待たされる仕組みのことです。一般的な自己都合退職の給付制限は2025年4月以降は原則1か月ですが(ハローワーク・基本手当について)、特定理由離職者ならこの制限がありません。手続き後の待期7日が終われば、そのあとは受給対象の期間に入ります。
もう一つ得なのが受給資格のハードルです。通常は離職前2年間に被保険者期間が通算12か月以上必要ですが、特定理由離職者は離職前1年間に通算6か月以上あれば受給できます(ハローワーク・特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲)。在職期間が短めの人でも届きやすくなります。自己都合退職を早くもらう全体の流れは失業保険を早くもらう方法で詳しく整理しています。
失業保険は働ける状態が前提なので療養中はそもそも受け取れない
ここがいちばん大事なポイントです。「うつ病で辞めたから失業保険がすぐもらえる」と思っている人が多いのですが、実際は逆のこともあります。失業保険(雇用保険の基本手当)は、働く意思と能力があるのに仕事が見つからない人を支える制度です。つまり「今すぐ働ける状態」であることが受給の条件になります。
まだ通院や療養が必要で、医師が「働ける状態ではない」と判断する間は、求職活動ができないため失業保険の対象になりません。無理に「働けます」と申告して受給を始めても、後で実態と違うと判断されると問題になります。うつ病で退職した直後は、まず治療に専念する時期と割り切ったほうが結果的に有利です。
では療養中は何も受け取れないのかというと、そうではありません。在職中から続く症状なら傷病手当金、退職後に動くなら受給期間の延長申請という別の手があります。失業保険と傷病手当金は同時には受け取れないので、時期で使い分けるのが基本です。両者の違いは失業保険と傷病手当金で確認できます。
働けない間は傷病手当金を受け取り受給期間を最長3年延長しておく
失業保険には「受給期間」という期限があります。原則は離職の翌日から1年です。この1年の間に受け取り終えないと、残っていても権利が消えます。うつ病で療養していると、この1年がただ過ぎてしまい、回復した頃には期限切れ、という事態になりかねません。
それを防ぐのが受給期間の延長申請です。病気などで引き続き30日以上働けない状態になったときに申請でき、本来の1年に最大3年を足して、最長で離職の翌日から4年まで受給期間を延ばせます。働けない期間は受給のカウントを止めておき、動けるようになってから使い始めるイメージです。
申請のタイミングにも注意してください。働けない状態が30日続いた日の翌日から申請できます。早めにハローワークへ相談しておくと安心です。療養そのものの生活費は、在職時から続く休職であれば傷病手当金で支えられます。傷病手当金は休んだ期間の給料のおよそ3分の2で、同じ病気について通算で最長1年6か月まで受け取れます(全国健康保険協会・傷病手当金)。
回復して働ける状態になったら延長を解除して受給を始める
| 時期 | 受け取るお金 | やること |
|---|---|---|
| 退職後・療養中 | 傷病手当金(条件を満たす場合) | 受給期間の延長申請をしておく |
| 回復して働ける状態 | 失業保険(基本手当) | 延長を解除して求職の申し込み |
体調が回復し、医師が「働ける状態」と認めたら、延長していた受給期間を解除します。ハローワークで求職の申し込みをして、改めて失業保険の手続きに入る流れです。このとき、働けるようになったことを示すために医師の意見書などを求められることがあります。
解除後は、特定理由離職者であれば給付制限なしで、待期7日の後に受給対象の期間に入ります。ただし実際の初回振込は、最初の失業認定や求職活動の実績確認を経るため、おおむね1か月ほど先になると考えておくとずれが少ないです。「待期が終われば即入金」ではない点だけ押さえておいてください。
うつ病が重く就職困難者と認められると所定給付日数は最長300日になる
うつ病の文脈で「失業保険が300日もらえる」という話を見かけます。これは正確には「就職困難者」と認められた場合の所定給付日数です。所定給付日数とは、失業保険を受け取れる日数の上限のことです。
就職困難者は、精神障害者保健福祉手帳を持っているなど、就職が著しく難しいと認められる人が対象です。この場合の所定給付日数は、年齢や加入期間に応じて150日や300日(45歳以上で被保険者期間が長いと360日)まで延びます(ハローワーク・基本手当の所定給付日数)。一方、特定理由離職者そのものの所定給付日数は、一般の離職者と同じ90日から150日が基本です。つまり「うつ病で辞めた=自動的に300日」ではありません。
うつ病で就職困難者と認められるには、手帳の有無などの条件をハローワークで確認する必要があります。300日受給の条件や手帳との関係はうつ病で失業保険を300日もらう条件で詳しくまとめています。自分がどの枠に当てはまるかは、離職票を持ってハローワークで相談するのが確実です。
申請には離職票と医師の診断書などをそろえてハローワークで手続きする
手続きはハローワークで行います。退職後に会社から離職票が届いてから動き始めます。離職票は退職後10日前後で郵送されることが多いので、なかなか届かないときは会社に確認してください。主に必要なものは次のとおりです。
- 離職票1・離職票2
- 本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカードなど)
- マイナンバーが確認できる書類
- 本人名義の預金通帳またはキャッシュカード
- 証明写真(規定のサイズ。マイナンバーカードがあれば省略できる場合あり)
- うつ病での退職を証明する医師の診断書(特定理由離職者の判断に使われます)
うつ病が退職理由だと示すうえで、医師の診断書は要になります。退職理由や働けなかった事情が書かれたものを用意しておくと、特定理由離職者の判断がスムーズです。書式や記載内容は精神科の診断書も参考になります。
これらの書類は自分でそろえて申請できます。とはいえ、体調がすぐれない中で会社とのやり取りや書類集め、傷病手当金や延長申請の段取りまでこなすのは負担が大きいものです。手続きの順番が不安なときは、無料の診断で何をいつ申請すべきか整理してくれる代行支援に相談する手もあります。
よくある質問
- 厚生労働省 ハローワークインターネットサービス「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要」 https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_range.html
- 厚生労働省 ハローワークインターネットサービス「基本手当の所定給付日数」 https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_benefitdays.html
- 厚生労働省 ハローワークインターネットサービス「基本手当について」 https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_basicbenefit.html
- 大阪労働局「受給期間の延長」 https://jsite.mhlw.go.jp/osaka-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/koyou_hoken/hourei_seido/situgyo/minasama/entyo.html
- 全国健康保険協会「傷病手当金」 https://www.kyoukaikenpo.or.jp/benefit/injury_and_sickness_allowance/index.html
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※相談・診断は無料。受給可否はハローワーク・各保険者の審査によります



