結論から言うと、最初の待期3日間だけ有給を当て、4日目以降を無給にして傷病手当金を受け取る組み合わせが、無収入の期間を作らずに損しにくいやり方です。待期は給与が出ていても完成し、有給で給与が出た日は傷病手当金が支払われないという2つのルールが、この使い分けのカギになります。休みが短いか長いか、残業が多いかで有利な順番は変わるので、自分のケースで確認してください。
待期の3日間は有給を使っても傷病手当金の対象になる
傷病手当金は、病気やケガで連続して3日休んだあと、4日目から支給されます。この最初の連続3日間を「待期」と呼びます。言いかえると、傷病手当金をもらうために最初に必要な助走期間です。
ここがよく誤解されるところですが、待期の3日間は有給休暇を使っても成立します。土日や祝日などの休みも3日にカウントできます。待期は「給与が出たかどうか」ではなく「連続して仕事を休んだか」で判断されるためです(出典:協会けんぽ・よくあるご質問)。だから待期3日を有給で埋めても、4日目以降の傷病手当金にはまったく影響しません。
注意したいのは「連続」していることです。3日休んで1日出勤、また休む、という飛び石の休み方だと待期が完成しません。最初の3日は続けて休む必要があります。
有給で給与が出た日は傷病手当金が支払われない
待期が終わったあとの日について、有給を使って給与が出た日は傷病手当金が支払われません。傷病手当金は「給与をもらえない期間の生活を支える」ためのお金なので、給与が出ている日には原則として出ない仕組みだからです。
例外として、その日の給与が傷病手当金の日額より少ない場合は、差額だけが支給されます。たとえば半休で半日分の給与しか出なかった日などがこれにあたります。給与が傷病手当金の日額を上回っていれば、その日はゼロです。
つまり「有給をもらいながら傷病手当金も満額もらう」という二重取りはできません。同じ日にどちらか一方、というのが基本の考え方です。
1日あたりの金額は有給のほうが高くなりやすい
1日あたりで比べると、多くの場合は有給のほうが高くなります。有給休暇の賃金は、労働基準法で「通常の賃金」「平均賃金」「標準報酬日額」のいずれかで支払うと決められていて、実務でいちばん多いのは「通常の賃金」です(出典:労働基準法第39条・e-Gov)。通常の賃金は月給を1か月の所定労働日数(おおむね20〜22日)で割って出すので、月を30で割る傷病手当金の日額より、もともと1日の単価が高く出ます。
一方の傷病手当金は、標準報酬日額(標準報酬月額の平均を30で割った額)の約3分の2です。標準報酬月額には残業代も含まれますが、3分の2に減るぶん、同じ人でも1日あたりでは有給を下回るのが一般的です。下の目安で見てください(所定労働日数を月21日と仮定)。
| ケース | 有給の日額(通常の賃金・目安) | 傷病手当金の日額(目安) | 1日あたりが高いのは |
|---|---|---|---|
| 残業少なめ 月給30万円(ほぼ基本給) | 約14,300円 | 約6,667円 | 有給 |
| 基本給30万円+残業16万円 月給46万円 | 約14,300円 | 約10,222円 | 有給 |
有給は残業代を含まない基本給ベースで計算されることが多く、表のように残業が多い人でも、1日あたりでは有給のほうが高く出ます。だから待期3日だけ有給にして残りを傷病手当金にするねらいは「日額の高さ」ではなく、後述する非課税と有給の温存にあります。会社が有給を「標準報酬日額」方式で払う場合は単価が下がるので、自社の計算方法は就業規則で確認してください。傷病手当金の正確な日額は傷病手当金の計算方法と早見表で確認できます。
待期3日だけ有給にして4日目から傷病手当金にすると手取りで損しにくい
多くの人にとって無難なのは、待期の3日だけ有給を当てて、4日目以降は有給を使わず傷病手当金を受け取る形です。理由は3つあります。
- 待期の3日を有給で埋めれば、収入が途切れる空白の期間をなくせます。
- 傷病手当金は非課税ですが、有給で受け取る給与は課税対象です。同じ額面なら手取りは傷病手当金のほうが残りやすいです。
- 有給を温存できるので、復帰後の通院や、退職時の消化など、別の場面に回せます。
ただし、額面の総額で見ると話は変わります。1日あたりは有給のほうが高いので、休む期間が手持ちの有給日数におさまるなら、全日を有給にしたほうが合計額は多くなります。短期間で確実に復帰できるなら、有給を多めに使う判断もありです。
勘違いしやすいのは、「とりあえず有給を全部使ってから傷病手当金」と決めてかかる必要はない点です。有給は日数に限りがあるので、長く休む見込みなら待期だけ有給にして残りを傷病手当金に回したほうが、後半まで収入を保てます。
短い休みは有給優先、長い休みは傷病手当金優先が基本
使い分けの目安は、休む期間の長さです。
| 休む期間 | 向いている使い方 | 理由 |
|---|---|---|
| 数日〜2週間ほどの短期 | 有給を中心に使う | 有給は基本的に満額。短期なら有給の総額のほうが多くなりやすい |
| 1か月以上の長期 | 待期3日だけ有給、残りは傷病手当金 | 有給は日数に限りがある。傷病手当金は通算で最長1年6か月もらえる |
長く休む見込みなら、有給を最初に使い切ってしまうと、後半に収入の支えがなくなります。長期化しそうなときほど有給は温存し、傷病手当金を主軸にするほうが安定します。
申請の具体的な書き方や流れは傷病手当金の申請方法に、初回がいつ振り込まれるかは傷病手当金の支給日にまとめています。
退職前の有給消化は退職日に出勤しないことが条件
退職前に残った有給をまとめて消化する人は多いですが、退職後も傷病手当金を続けてもらいたい場合は注意が必要です。退職日に出勤してしまうと「その日は働ける状態だった」と判断され、退職後の傷病手当金が受け取れなくなることがあります。
退職後も継続して傷病手当金をもらうには、おおまかに次の2つを満たす必要があります(出典:協会けんぽ・資格喪失後の継続給付)。
- 退職日までに、健康保険の被保険者期間が継続して1年以上あること。
- 退職日に出勤しておらず、働けない状態(労務不能)が続いていること。
有給消化の最終日を退職日にすること自体は問題ありません。問題になるのは、退職日に挨拶などで出社してしまうケースです。最終出社日と退職日がずれているか、退職日が休みになっているかを必ず確認してください。
申請のやり取りが負担なら代行支援を使う手もある
傷病手当金も有給の手続きも、自分で進められます。傷病手当金は申請書に勤務先と医師の記入をもらって健康保険組合や協会けんぽに出すだけで、専門家でなくても完結します。まずはそれが基本だと知っておいてください。
とはいえ、休んでいる最中に会社とやり取りを重ねたり、書類の不備で何度もやり直したりするのが負担に感じる人もいます。体調が優れないときは特にそうです。そういうときは、申請の代行や相談に乗ってくれるサポートを使う手もあります。自分でやるか任せるかは、体力と時間に合わせて決めて問題ありません。
よくある質問
- 全国健康保険協会「病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)」 https://www.kyoukaikenpo.or.jp/benefit/injury_and_sickness_allowance/index.html
- 全国健康保険協会「病気やケガで会社を休んだとき(待期・支給要件)よくあるご質問」 https://www.kyoukaikenpo.or.jp/faq/benefit/002/index.html
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※相談・診断は無料。受給可否はハローワーク・各保険者の審査によります



