傷病手当金と失業保険はどっちが得?順番に切り替えれば両方もらえる

傷病手当金と失業保険は同じ期間に両方もらうことはできませんが、順番にもらえば結果的に両方受け取れて、総額も大きくなります。療養中はまず傷病手当金で生活を支え、働ける状態に戻ったら失業保険に切り替える、というリレーが王道です。ここでは、どちらが得か、なぜ同時にもらえないか、そして失業保険を後ろ倒しにするために退職時にやっておくべき手続きまで、順を追って整理します。

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傷病手当金と失業保険は同じ期間に両方はもらえない

傷病手当金と失業保険(基本手当)は、同じ日について両方を受け取ることはできません。理由は、二つの制度が正反対の人を対象にしているからです。傷病手当金は「病気やけがで働けない人(労務不能)」のための健康保険の給付で、失業保険は「働ける状態なのに仕事が見つからない人」のための雇用保険の給付です。働けないのか、働けるのか、前提がぶつかるため、同時には成り立ちません。

ここで多くの人がつまずくのが、退職後にすぐ失業保険を申請してしまうケースです。療養中で実際には働けないのに失業保険の手続きを進めると、本来もらえたはずの受給期間を後ろ倒しにする権利(後述の受給期間延長)を使えなくなることがあります。療養中はまず傷病手当金、という順番を最初に押さえてください。失業保険と傷病手当金の関係そのものは失業保険と傷病手当金でも詳しく整理しています。

療養中は傷病手当金、回復後に失業保険の順でもらうのが得

結論から言うと、得をするのは「両方を順番に受け取る」やり方です。流れはこうなります。

  • 療養で働けないあいだ … 傷病手当金を受け取る(在職中でも退職後でも条件を満たせば継続可)
  • 退職するとき … ハローワークで失業保険の受給期間延長を申請しておく
  • 病気が回復して働ける状態になったら … 延長を解除し、失業保険(基本手当)を受け取る

このリレーが成り立つのは、失業保険には本来「退職日の翌日から1年以内に受け取る」という期限があるからです。療養していると、この1年があっという間に過ぎてしまいます。そこで受給期間延長を申請しておくと、受け取れる期限を最長3年延ばせて、合計で最長4年まで猶予が生まれます。回復してから落ち着いて失業保険を受け取れる、というわけです。

逆に言うと、延長申請を忘れたまま療養していると、回復したころには失業保険の受給期間が終わっていた、という事態になりかねません。順番だけでなく、退職時の延長申請までセットで動くのが安全です。

金額や期間や条件は傷病手当金と失業保険でこう違う

「どちらが得か」を一言で決めるのは難しく、もらえる金額は給与水準や年齢によって変わります。まずは二つの制度を並べて見比べてください。

項目 傷病手当金 失業保険(基本手当)
対象 病気やけがで働けない人 働ける状態で求職中の人
制度 健康保険 雇用保険
1日あたりの額 標準報酬日額のおよそ3分の2 離職前6か月の賃金からおよそ5割〜8割
もらえる期間 同じ病気について通算で最長1年6か月 原則90〜150日(会社都合の特定受給資格者は最長330日、就職困難者は最長360日)
主な条件 連続3日の待期後、4日目以降も働けず給料が出ていない 働く意思と能力があり求職活動をしている
税金 非課税 非課税

標準報酬日額とは、ざっくり言うと社会保険料を決めるもとになる平均月収(標準報酬月額)を30で割った1日あたりの金額です。一般的には、給与が高い人ほど傷病手当金のほうが1日あたりの額は大きくなりやすく、給与が低めの人は失業保険の給付率(最大8割)が効いて差が縮まる傾向があります。ただし期間の長さも含めて考えると、片方だけ選ぶより順番に両方受け取るほうが総額は大きくなります。

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傷病手当金は給与の約3分の2を最長通算1年6か月もらえる

傷病手当金は、病気やけがで会社を休んで給料が出ないあいだの生活を支える健康保険の給付です。金額はおおまかに言うと普段の給料の3分の2くらいで、直近12か月の標準報酬月額の平均を30で割った1日あたりの額の3分の2に、休んだ日数をかけて計算します。たとえば標準報酬月額の平均が30万円なら、30万円÷30=1万円、その3分の2でおよそ1日6,667円が目安です。

受け取れるのは、連続して3日休んだ後(待期3日。土日祝や有給を含めてよい)の4日目以降で、同じ病気について通算で最長1年6か月までです(全国健康保険協会・傷病手当金)。注意したいのは、傷病手当金そのものは非課税ですが、休んでいるあいだも社会保険料や住民税の支払いは続くため、手取りの感覚では満額そのままではない点です。退職後も、退職日まで健康保険の加入が継続して1年以上あり、退職日に働けない状態が続いている(退職日に出勤しない)などの条件を満たせば、続けて受け取れます。受け取れる期間の数え方は傷病手当金の支給期間で詳しく確認できます。

失業保険を後ろ倒しにするには退職後の受給期間延長申請がいる

失業保険を後ろ倒しにするカギが、退職後にハローワークで行う受給期間延長申請です。これは、失業保険を受け取れる期限(原則は退職日の翌日から1年)を、病気などで30日以上働けない場合に最長3年延ばす手続きです。本来の1年と合わせて、最長4年まで失業保険を取っておけることになります。

手続きの大まかな流れは次のとおりです。

  • 退職後、病気やけがで引き続き30日以上働けない状態になる
  • ハローワークに「受給期間延長申請書」を提出する(医師の証明など、働けないことがわかる書類が必要)
  • 窓口だけでなく郵送や代理人による申請もできる
  • 病気が回復して働けるようになったら、延長を解除して失業保険の受給手続きを始める

失業保険の受け取り方そのものや自己都合退職の扱いは失業保険の自己都合退職もあわせて読んでおくと、回復後の流れがイメージしやすくなります。

延長申請が遅れると失業保険を満額もらえなくなる

受給期間延長申請でいちばん気をつけたいのが、申請のタイミングです。申請できるのは、引き続き30日以上働けなくなった日の翌日から、延長後の受給期間の最後の日までのあいだです(2017年4月以降、申請できる期間が広がりました)。期限の幅は広く見えますが、油断は禁物です。

見落とされがちなのがここです。申請が遅れると、回復後に受け取れる失業保険の日数(所定給付日数)を全部はもらえなくなる場合があります(ハローワーク・基本手当の所定給付日数)。延長して期限を延ばせても、実際に受け取れる日数まで増えるわけではないからです。出すのが遅いほど、もらいそびれる日数が出やすくなります。働けない状態が30日続いたら、できるだけ早めに申請してください。

書類の準備や会社・医療機関とのやり取りが負担なときは、申請の流れを無料で相談できる診断サービスに状況を整理してもらう手もあります。手続き自体は自分でも進められますが、療養中で動きづらい時期だけ外部の支援を使うという進め方もできます。

どちらが得かは人によるが順番に受け取れば総額は最大化する

結局どちらが得かは、給与水準・年齢・働けない期間の長さで変わるため、片方だけを比べて決めるものではありません。1日あたりの額だけ見ると傷病手当金が上回る人が多いものの、失業保険は給付率が最大8割になるため、給与が低めの人では差が小さくなります。

大事なのは、二つを「どちらか一方」で考えないことです。療養中は傷病手当金(最長通算1年6か月)、回復後は失業保険(原則90〜150日、就職困難者なら最長360日)と順番に受け取れば、受け取れる期間と総額の両方を大きくできます(ハローワーク・所定給付日数)。なお、病気が原因で退職し働くのが難しいと認められると、失業保険の自己都合退職でかかる給付制限(2025年4月以降は原則1か月。ハローワーク・基本手当について)が外れたり、就職困難者として受給日数が長くなったりするケースもあります。自分がどちらの枠に当てはまるかで結論が変わるので、退職前にハローワークと加入先の健康保険に確認しておくと確実です。

よくある質問

Q. 傷病手当金と失業保険は同時にもらえますか
A. 同じ期間に両方を受け取ることはできません。傷病手当金は働けない人、失業保険は働ける人が対象で、前提が正反対だからです。療養中は傷病手当金、回復して働けるようになったら失業保険、という順番に切り替えれば、結果的に両方を受け取れます。
Q. 傷病手当金と失業保険はどちらが得ですか
A. 金額は給与水準や年齢で変わるため一概には言えません。1日あたりの額は傷病手当金(給与の約3分の2)のほうが大きくなる人が多い一方、失業保険は給付率が最大8割なので給与が低めの人では差が縮まります。片方を選ぶより、順番に両方もらうほうが総額は大きくなります。
Q. 失業保険を後でもらうには退職時に何をすればいいですか
A. ハローワークで受給期間延長申請をしておきます。病気などで30日以上働けない場合、本来1年の受給期間を最長3年延ばせて、合計で最長4年まで失業保険を取っておけます。回復したら延長を解除し、失業保険の受給手続きを始めます。
Q. 受給期間延長の申請に期限はありますか
A. 引き続き30日以上働けなくなった日の翌日から、延長後の受給期間の最後の日までのあいだに申請できます。ただし申請が遅れると、受け取れる失業保険の日数を全部はもらえなくなる場合があります。30日働けない状態が続いたら、早めに申請してください。
Q. 病気で退職した場合の失業保険は何日もらえますか
A. 自己都合退職は原則90〜150日ですが、病気で働くのが難しいと認められて就職困難者にあたると、最長300日(45歳以上65歳未満は360日)になります。また病気が原因の退職では、自己都合でかかる給付制限(2025年4月以降は原則1か月)が外れることもあります。該当するかは退職前にハローワークで確認してください。

参考資料

  1. 全国健康保険協会「傷病手当金」 https://www.kyoukaikenpo.or.jp/benefit/injury_and_sickness_allowance/index.html
  2. ハローワーク「基本手当の所定給付日数」 https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_benefitdays.html
  3. 厚生労働省「雇用保険の基本手当について 受給期間延長の申請期限を変更します」 https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000163256.pdf
  4. 厚生労働省「雇用保険制度」 https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_basicbenefit.html

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