適応障害で会社を休んでも、健康保険に入っていて医師が「働けない」と認めれば、傷病手当金として月収のおよそ3分の2を最長1年6か月受け取れます。仕事が原因かどうかは問われず、待期の3日を経た4日目から対象です。ここでは受給の条件、金額の目安、もらえる期間、退職後の続け方、申請の手順を順番に整理します。
適応障害でも健康保険加入と医師の労務不能の証明があれば傷病手当金はもらえる
適応障害で休む場合、傷病手当金がもらえるかどうかは次の4つで決まります。仕事のストレスが原因かどうかは関係ありません。
- 勤務先の健康保険(協会けんぽや健康保険組合)に加入していること。国民健康保険の人は対象外です
- 医師が「働けない状態(労務不能)」と認めること。労務不能とは、これまでの仕事を続けられない状態を指します
- 連続する3日を含めて4日以上仕事を休んでいること
- 休んでいる間、会社から給料が出ていないこと(出ていても傷病手当金より少なければ差額が出ます)
適応障害はうつ病などと同じく、医師が労務不能と判断すれば対象になります。診断書ではなく、傷病手当金支給申請書という専用の用紙に医師が記入する欄があり、そこに「働けない」と書いてもらう点がポイントです。ここを診断書だけで済ませようとして差し戻される人が多いので注意してください。
国民健康保険には傷病手当金の制度がありません。退職して国保に切り替える前に、在職中から受け取り始めておくことが大切になります。詳しくは傷病手当金がもらえないケースでまとめています。
もらえる金額は標準報酬月額のおよそ3分の2で月収20万円なら月13万円前後
金額のおおよその目安は、月収の3分の2です(全国健康保険協会)。正確には次の式で1日あたりの金額を出します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 計算式 | 支給開始日より前12か月の標準報酬月額の平均 ÷ 30 × 3分の2 |
| 標準報酬月額とは | 社会保険料を決めるための、おおまかな月収の区分。残業代なども含めた平均的な月給にあたります |
| 月収20万円の人の目安 | 1日あたり約4,400円。30日休むと月13万円前後 |
| 月収30万円の人の目安 | 1日あたり約6,600円。30日休むと月20万円前後 |
加入してから12か月たっていない場合は、これまでの加入期間の平均と、全加入者の平均額(30万円程度)のうち、低いほうを使って計算します。新しい会社に入ってすぐ休んだ人は、想定より少なくなることがあります。
傷病手当金そのものに税金はかかりません。ただし、休んでいる間も社会保険料と住民税の支払いは続きます。会社が立て替えてくれることが多く、復帰後にまとめて請求される、または毎月振り込みで会社に払うことになります。額面の3分の2がそのまま手元に残るわけではありません。計算の詳しい手順は傷病手当金の計算方法を見てください。
支給は待期3日のあとの4日目から始まり通算で最長1年6か月続く
支給が始まるのは、休み始めてすぐではありません。最初に「待期」という3日間があります。
- 連続して3日休むと待期が完成します。この3日は土日や有給休暇、祝日でもカウントされます
- 待期が完成した次の日、つまり4日目から傷病手当金の対象になります
- 最初の3日分は支給されません
もらえる期間は、支給が始まった日から通算で最長1年6か月です(全国健康保険協会)。2022年からは「通算」になったため、途中で復職して一時的に止まっても、その分は使った日数に数えません。出社と欠勤を繰り返しても、実際に支給を受けた日数の合計が1年6か月に達するまで受け取れます。
たとえば3か月もらって復職し、再発してまた休んだ場合、残りの1年3か月分が使えます。期間の数え方は傷病手当金の支給期間で図解しています。
退職後も続けて受け取るには在職1年以上と退職日に出勤しないことが条件
退職しても傷病手当金は受け取り続けられます。これを継続給付といいます。条件は次の2つです。
- 退職日まで、健康保険に続けて1年以上加入していたこと(転職をはさんでも、空白なくつながっていればまとめて数えます)
- 退職日に働ける状態ではなく、実際に出勤していないこと
ここで一番やりがちな失敗が、退職日に「最後の挨拶だけ」と出社してしまうことです。退職日に出勤すると「働ける状態だった」とみなされ、継続給付の資格を失います。有給消化中でも、退職日当日は出社しないでください。
また、退職後に一度でも働ける状態に回復すると、その後で再び悪化しても継続給付は復活しません。退職してからの受給は、在職中より条件がシビアになります。退職を考えているなら、先に在職中から傷病手当金を受け取り始めておくのが安全です。
申請は会社と医師に書類を書いてもらい健康保険の窓口に出す流れ
申請は自分で進められます。代行業者に頼まなくても手続きできるので、まずは流れを把握してください。
- 1. 心療内科や精神科を受診し、適応障害の診断を受ける
- 2. 会社に休職を申し出る。傷病手当金を申請したいと伝えておく
- 3. 加入している健康保険(協会けんぽや健康保険組合)から支給申請書を入手する。協会けんぽは公式サイトでダウンロードできます
- 4. 申請書の本人記入欄を埋める
- 5. 医師に「療養担当者記入欄」を書いてもらう。ここに労務不能と記載してもらうのが核心です
- 6. 会社に「事業主記入欄」を書いてもらう。給料を払っていないことの証明です
- 7. すべて記入したら健康保険の窓口に提出する
申請は通常、1か月ごとにまとめて行います。提出から振り込みまではおよそ1〜2か月かかります。初回は審査に時間がかかりやすいので、生活費の余裕を見ておいてください。申請のコツは傷病手当の申請方法に詳しくあります。
会社とのやり取りや書類のやり取りが負担に感じるときは、申請を支援してくれるサービスに任せる手もあります。療養を続けながらでも、自分で進める方法と支援に任せる方法のどちらも使えます。
会社には病名が伝わるが取引先や同僚に知られる仕組みではない
傷病手当金を申請すると、会社には病名が伝わります。事業主記入欄を会社に書いてもらう必要があり、その際に申請書の傷病名が目に入るためです。これは制度上避けられません。
ただし、伝わるのは人事や総務など手続きを担当する範囲までです。傷病手当金の申請をきっかけに、同僚や取引先、家族に病名が通知される仕組みはありません。健康保険の窓口から外部に知らされることもありません。
会社に病名を知られたくない事情がある場合でも、休職して給料が出ていない事実は会社が把握しているので、傷病名だけを完全に隠して申請することはできません。適応障害という診断は、休職の正当な理由にあたります。傷病名は手続きを担当する範囲にとどまるため、必要な範囲で共有して制度を使う形になります。
傷病手当金と失業保険は同時にもらえないので受給期間の延長で順番に使う
傷病手当金と失業保険(基本手当)は、同時には受け取れません。考え方がはっきり分かれているからです。
| 制度 | 前提 | 対象になる人 |
|---|---|---|
| 傷病手当金 | 働けない | 療養が必要で仕事ができない人 |
| 失業保険 | 働ける | 働ける状態で求職活動をする人 |
適応障害で休んでいる間は「働けない」状態なので、まず傷病手当金を受け取ります。失業保険は本来、退職の翌日から1年以内に受け取らないと権利が消えますが、働けない期間はハローワークで受給期間の延長を申請しておけます。延長は最長で受給期間を3年延ばせるので、合わせて最長4年以内まで先送りできます。
流れとしては、退職後も傷病手当金で療養し、回復して働けるようになったら延長を解除して失業保険に切り替える、これが王道です。なお、適応障害やうつで働くのが難しいと認められると「就職困難者」として扱われ、失業保険の所定給付日数が最長300日(45歳以上65歳未満は360日)に延びることがあります(ハローワーク)。順番の組み立て方は失業保険と傷病手当金でくわしく解説しています。退職後の休職の進め方は適応障害の休職もあわせて読んでください。
よくある質問
- 全国健康保険協会「病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)」 https://www.kyoukaikenpo.or.jp/benefit/injury_and_sickness_allowance/index.html
- 全国健康保険協会「傷病手当金支給申請書」 https://www.kyoukaikenpo.or.jp/application_form/benefit/001/index.html
- 全国健康保険協会「傷病手当金の支給期間(通算1年6か月)」 https://www.kyoukaikenpo.or.jp/benefit/injury_and_sickness_allowance/index.html
- ハローワーク インターネットサービス「受給期間の延長」 https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_benefitdays.html
- 厚生労働省「基本手当の所定給付日数」 https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_benefitdays.html
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※相談・診断は無料。受給可否はハローワーク・各保険者の審査によります



