傷病手当金の計算方法は?月給別の支給額早見表と減額されるケースを解説

傷病手当金の支給額は、標準報酬月額の3分の2で計算されます。月給30万円の場合、1ヶ月分の支給額は約20万円ですが、社会保険料と住民税の支払いが必要なため実際の手取り額はより少なくなります。パート・アルバイト・派遣社員でも社会保険に加入していれば同じ計算方法で支給されます。

この記事では、傷病手当金の基本計算式、支給額の目安早見表、支給開始日と支給期間、パート・アルバイトの計算方法、退職後の計算、賞与や残業代の扱い、支給額が減額・調整されるケースまで解説します。傷病手当金の支給額を知りたい方はぜひ参考にしてください。

傷病手当金の基本計算式

傷病手当金の支給額は、「1日あたりの支給額 × 休んだ日数」で決まります。 1日あたりの支給額は、過去1年間の平均月収(標準報酬月額)を基に、以下の式で計算されます。

1日あたりの支給額 = (支給開始日以前の継続した12ヶ月間の各月の標準報酬月額を平均した額) ÷ 30日 × 2/3

参考:全国健康保険協会「病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)

「標準報酬月額」とは、基本給だけでなく、残業代や通勤手当などを含んだ月収を、一定の等級(ランク)に当てはめたものです。

参考:全国健康保険協会「標準報酬月額・標準賞与額とは?

傷病手当金の計算例

例:月給30万円の場合】
→ 標準報酬日額:30万円 ÷ 30日 = 1万円
→ 支給額:1万円 × 2/3 × 30日 = 約20万円

傷病手当金の支給額の目安早見表(おおよその手取りイメージ)

月収(標準報酬月額)ごとの支給額の目安は以下の通りです。

月収(標準報酬月額)標準報酬日額(÷30)1日あたり支給額(× 2/3)1ヶ月分(30日)支給額
20万円約6,667円約4,445円約13.3万円
25万円約8,333円約5,555円約16.6万円
30万円約10,000円約6,666円約20.0万円
35万円約11,667円約7,778円約23.3万円
40万円約13,333円約8,888円約26.6万円

「月給の2/3」がそのまま手取りになるわけではありません。傷病手当金自体は非課税ですが、休職中も社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料)と住民税(前年の所得にかかる分)の支払いは必要です。

これらは支給された傷病手当金から支払う必要があるため、実際の手取り額は、上記の支給額から社会保険料・住民税を引いた金額(例:月収30万の場合、支給額約20万 − 諸々約6万 = 手取り約14万円)となります。

傷病手当金の支給開始日と支給期間について

傷病手当金は、休んですぐに支給されるわけではありません。

  • 支給が開始されるのは、連続して3日間休んだ(待期期間)後の、4日目以降の休業日からです。
  • この「待期期間」の3日間には、有給休暇や土日・祝日も含まれます。
  • 支給は、支給開始日から通算して最長1年6ヶ月までとなります。

パート・アルバイト・派遣社員の場合の傷病手当金の計算方法

パートやアルバイト、派遣社員であっても、勤務先の社会保険(健康保険)に加入していれば、正社員と同様に傷病手当金の対象となります。

計算式も正社員と全く同じです。ただし、支給額は標準報酬月額(=月収)に基づいて決まるため、月収が低い場合は支給額もそれに比例して少なめになります。

傷病手当金の計算例

【例:月収12万円(平均標準報酬月額12万円)の場合】

  • 1日あたりの支給額:120,000円 ÷ 30日 × (2/3) = 約2,667円
  • 1ヶ月(30日)休んだ場合:約2,667円 × 30日 = 約8万円

退職後の傷病手当金の計算はどうなる?

退職後も継続給付の条件(退職日までに1年以上の被保険者期間があり、退職日に出勤しないなど)を満たせば、傷病手当金は支給されます。

その場合の計算は、在職中と変わりません。支給額は、あくまで「支給開始日(在職中)以前の12ヶ月間の標準報酬月額」で固定されます。

退職後に収入がゼロになったとしても、支給額が減ったり増えたりすることはなく、支給開始日から通算して最長1年6ヶ月の期間満了まで、在職中と同じ計算方法で算出された金額が継続して支給されます。

賞与や残業代は含まれる?傷病手当金の計算対象となる給与の範囲

傷病手当金の計算の基礎となる「標準報酬月額」には、含まれるものと含まれないものがあります。

含まれるもの含まれないもの
基本給賞与・臨時ボーナス(※年3回以下の場合)
役職手当・通勤手当・住宅手当一時的な報奨金(インセンティブ)
固定残業代(毎月決まって支給されるもの)非課税の手当(出張費、慶弔見舞金など)
定期支給の手当お祝い金など

標準報酬月額は「毎月決まって支給される報酬」が基準となるため、年3回以下の賞与(ボーナス)は計算に含まれません

傷病手当金の支給額が減額・調整されるケース

傷病手当金は、他の公的給付や会社からの給与と重複して受け取ることはできず、その場合は支給額が調整されます。

ケース1|「会社から給与が支払われた場合

休んだ期間について会社から給与(休職手当など)が支払われた場合でも、その給与の日額が傷病手当金の日額より少ないときは、その差額分のみが支給されます。

ケース2|障害年金を受給している場合

同一の病気やケガが原因で「障害厚生年金」や「障害手当金」を受給している場合、原則として傷病手当金は支給されません。ただし、障害年金の額(日額換算)が傷病手当金の日額より少ない場合は、その差額が支給されます。

参考:日本年金機構「障害年金

ケース3|出産手当金を同時に受けられる場合

傷病手当金と出産手当金を同時に受けられる場合は、出産手当金が優先して支給されます。傷病手当金の額が出産手当金の額より多い場合は、その差額が支給されます。

ケース4|労災保険から休業補償給付を受けている場合

休んだ理由が業務上または通勤中の病気やケガであり、労災保険から「休業補償給付」を受けている期間中は、健康保険からの傷病手当金は支給されません

傷病手当金の計算方法に関するよくある質問

ここでは、傷病手当金の計算方法に関するよくある質問を紹介します。

入社して1年未満の場合はどうなりますか?
支給開始日以前の期間が12ヶ月に満たない場合は、以下のいずれか低い方の額で計算されます。
・入社してからの標準報酬月額の平均額
・前年度9月30日時点での全被保険者の標準報酬月額の平均額(令和7年3月31日までは30万円)
パートやアルバイトでも傷病手当金の計算方法は同じですか?
はい、健康保険に加入していれば、パートやアルバイトでも正社員と同じ計算方法で傷病手当金が支給されます。
ボーナスは計算に含まれますか?
いいえ、標準報酬月額の計算には、年3回以下のボーナスは含まれません。ただし、年4回以上の賞与は報酬とみなされ、標準報酬月額の計算に含まれます。

まとめ

傷病手当金の1日あたりの支給額は、支給開始日以前の継続した12ヶ月間の各月の標準報酬月額を平均した額を30日で割り、3分の2を掛けて計算されます。標準報酬月額とは、基本給だけでなく残業代や通勤手当などを含んだ月収を一定の等級に当てはめたものです。月給30万円の場合、1ヶ月分の支給額は約20万円です。

傷病手当金自体は非課税ですが、休職中も社会保険料と住民税の支払いは必要なため、実際の手取り額は支給額から諸々を引いた金額になります。支給が開始されるのは、連続して3日間休んだ待期期間後の4日目以降の休業日からで、支給開始日から通算して最長1年6ヶ月までです。

パート・アルバイト・派遣社員であっても、勤務先の社会保険に加入していれば正社員と同様に傷病手当金の対象で、計算式も全く同じです。退職後も継続給付の条件を満たせば、在職中と変わらず支給開始日以前の12ヶ月間の標準報酬月額で固定された金額が継続して支給されます。

標準報酬月額には、基本給、役職手当・通勤手当・住宅手当、固定残業代、定期支給の手当は含まれますが、賞与、一時的な報奨金、非課税の手当は含まれません。支給額が減額・調整されるケースは、会社から給与が支払われた場合、障害年金を受給している場合、出産手当金を同時に受けられる場合、労災保険から休業補償給付を受けている場合です。

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