再就職手当はもらわない方がいい?損得比較と判断基準をわかりやすく解説

失業保険(雇用保険の基本手当)を受給中に早期就職が決まったとき、「再就職手当はもらわない方がいいのでは?」という意見を見かけることがあります。

結論は、状況によって異なります。再就職手当には注意点がある一方で、条件がそろえば大きなメリットをもたらす制度でもあるためです。

この記事では、再就職手当の基本から「もらわない方がいい」と言われる理由、そして判断の基準までをわかりやすく解説します。

再就職手当の基本を整理しておこう

再就職手当の受給条件を確認するための3ステップフロー図。基本条件、就職先の条件、離職理由による制限を順に確認し、自己都合退職者への特別制約(給付制限中の再就職制限)も併せて説明されている。

再就職手当を正しく評価するには、制度の仕組みを理解することが欠かせません。

まずは支給条件と基本的な受給額の考え方を確認します。

再就職手当の支給条件と受給額の仕組み

再就職手当は、基本手当の受給資格がある人が、早期に「安定した職業」に就いた場合に支給される一時金です。

主な条件は以下の通りです。

▼再就職手当の主な支給要件

要件内容
被保険者期間離職前2年間に通算12ヶ月以上(特定受給資格者・特定理由離職者は6ヶ月以上で対象になる場合あり)
雇用見込み新しい職場で1年以上継続して働くことが見込まれる
就職経路待期満了後1ヶ月以内に就職する場合は、ハローワークまたは許可を受けた職業紹介事業者の紹介が必要
支給率支給残日数が所定給付日数の3分の2以上→70%、3分の1以上3分の2未満→60%
申請期限就職の翌日から1ヶ月以内に申請(原則)

支給額は「基本手当日額 × 支給残日数 × 給付率」で計算されます。基本手当日額には年齢区分ごとの上限が設定されており、それが結果的に再就職手当の総額上限にも影響します。

重要なのは、再就職手当を受給すると、その分の基本手当は消化扱いとなり、原則として元には戻せない点です。ただし、受給期間内に再離職した場合など、残日数があれば再開できるケースもあります。

参考:厚生労働省「再就職手当のご案内(PDF)

失業保険(雇用保険の基本手当)との関係

失業保険は「失業状態が続いている日」に日額で支給される給付です。再就職手当は「就職によって失業状態が解消された時点」で一時金として支給されます。

言い換えると、再就職手当は「将来もらえるはずの基本手当の一部を、60%または70%の割合で前倒し受給する制度」と位置付けられます。

参考:厚生労働省「基本手当について

再就職手当をもらわない方がいいと言われる理由

否定的な意見が出るのは、短期離職のリスクや、単純な金額比較で損に見えるケースがあるためです。

短期離職や継続就労に不安がある場合のリスク

再就職手当を受給後に短期間で離職してしまった場合、前の失業給付の残日数に戻ることはできません。

新たに基本手当を受給するには、一般の受給資格者は原則として再就職先で12ヶ月以上の被保険者期間が必要です。一方で、特定受給資格者や特定理由離職者の場合は、6ヶ月以上で受給資格を得られることがあります。

契約更新が不透明な職場や、試用期間が長い職場に入る場合、また体調に不安がある場合は慎重に判断が必要です。

失業給付を継続した方が得になるケース

再就職手当は60%または70%で支給されるため、残日数が多い状態で就職すると、単純な金額比較では基本手当を満額まで受けた方が多く受給できるケースがあります。

▼モデルケース比較

条件基本手当を継続再就職手当
基本手当日額6,000円・所定給付120日6,000円 × 120日 = 720,000円(残日数90日)6,000円 × 90日 × 70% = 378,000円

上記の例だけを見ると不利に見えますが、実際には、就職による給与収入が加わるため、総収入ベースで判断する必要があります。

もらわない選択をした場合に起こりうる影響

再就職手当を申請しない場合にどんな扱いになるのか、手続き面や将来の受給への影響を整理しておきましょう。

申請しないとどうなる?手続き面の流れ

就職が決まったら必ずハローワークに報告します。雇用保険受給資格者証を返却し、受給は就職日前日で終了します。再就職手当を希望しない場合、そのまま申請をしなければ手当は受け取れません。

申請期限は原則「就職の翌日から1ヶ月以内」です。基本的にはこの期限を過ぎると受理されませんが、雇用保険給付には時効(2年)があるため、やむを得ない事情がある場合は遡って認められる可能性もあります。

将来の失業保険や再申請への影響

新しい職場で12ヶ月以上勤務すれば、次回離職時に新たに受給資格が発生します。一方、短期離職の場合は条件を満たせず、給付を受けられない可能性があります。

また、自己都合退職の給付制限は2025年4月以降、原則1ヶ月に短縮されました。ただし、過去5年以内に2回以上「正当な理由のない自己都合退職」で受給資格決定を受けている場合などは、給付制限が3ヶ月となります。

離職理由と履歴は必ず確認しておきましょう。

再就職手当をもらうメリットと比較する

条件が整えば、再就職手当は大きなメリットを持つ制度でもあります。

支給額の目安と計算例

再就職手当の計算式は、以下の通りです。

基本手当日額 × 支給残日数 × 給付率(70%/60%)

▼ケース1

  • 基本手当日額:6,000円
  • 所定給付日数:120日
  • 就職時残日数:90日
  • 支給率:70%
  • 再就職手当額:378,000円

▼ケース2

  • 基本手当日額:7,500円
  • 所定給付日数:150日
  • 就職時残日数:80日
  • 支給率:60%
  • 再就職手当額:360,000円

▼ケース3

  • 基本手当日額:8,000円
  • 所定給付日数:180日
  • 就職時残日数:130日
  • 支給率:70%
  • 再就職手当額:728,000円

失業給付の総額より少なく見えても、就職後の給与収入を含めれば、総収入では大きくプラスに転じるケースが一般的です。

長期的に働ける人に有利な理由

再就職手当は短期間でまとまった資金を得られるため、転居や生活再建に役立ちます。

また、早期就職によって職歴の空白期間を減らせることは、将来の転職やキャリア形成にも有利に働きます。

迷ったときの判断基準

再就職手当を申請するかどうかは、個人の状況次第で答えが変わります。

感覚ではなく、客観的な基準をもとに検討しましょう。

勤務継続の見込みで判断する

最も重視すべきは、新しい職場でどの程度安定して働けるかです。

  • 契約内容:正社員・無期雇用、または1年以上の契約・更新見込み
  • 試用期間:3ヶ月程度が一般的、6ヶ月以上は要注意
  • 職場環境:職率・定着率、労働条件の実態、面接以外の情報の確認
  • 健康面:持病・通院の有無、職場の配慮体制、勤務継続の可否

→ 継続就労に不安が強い場合は、申請を控える選択肢も現実的です。

金額をシミュレーションして比較する

再就職手当は60%または70%の前倒し受給なので、残日数が多いと基本手当を継続した方が金額上は有利に見える場合があります。ただし就職による給与収入を加えると結果は変わるため、総収入ベースで比較することが重要です。

判断イメージ表(残日数×給与水準)

残日数給与水準有利な選択肢
多い(所定給付の2/3以上)給与が基本手当日額と同等以下基本手当を継続
多い(所定給付の2/3以上)給与が基本手当日額より高い再就職手当+給与収入
少ない(所定給付の1/3程度)給与が平均的再就職手当+給与収入
少ない(所定給付の1/3程度)給与が極端に低い状況に応じて検討(相談推奨)

※実際の判断には、税金・社会保険料や通勤費なども含めた「手取りベース」での試算が必要です。

ハローワークに相談すべきタイミング

以下のような場合は、自分で結論を出すよりも専門機関に相談する方が確実です。

  • 雇用契約に「更新あり」としか書かれておらず、1年以上働けるか不明確なとき
  • 自分の支給残日数や基本手当日額をもとにした計算に自信がないとき
  • 過去に再就職手当や基本手当を受給していて、今回の条件に影響しそうなとき

申請期限は「就職日の翌日から1ヶ月以内」なので、内定が出た段階で早めにハローワークへ相談しましょう。

まとめ

再就職手当をもらうべきかどうかは、その人の就労継続の見込みと経済状況によって結論が変わります。短期離職のリスクが高い場合や、残日数が多く失業給付の総額が有利に働く場合は申請を控えるのも一つの判断です。

逆に、安定した就職先が決まり長期就労が期待できるのであれば、再就職手当を活用して早期にまとまった資金を得ることは経済的にもキャリア的にも大きなメリットとなります。

判断に迷うときは、早めにハローワークで確認してみるのが安心です。

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