「再就職手当」は、失業手当の受給中に新しい仕事が決まった人が受け取れる給付金です。ただし、受給にはいくつもの条件があり、申請の時期や書類の不備によって支給されない場合もあります。
この記事では、再就職手当の仕組み・支給条件・申請方法・もらえない場合の代替制度をわかりやすく解説します。内容を理解しておけば、再就職を前向きに進めながら手当をしっかり受け取れるでしょう。
再就職手当の基本概要

再就職手当は、失業中に新しい仕事が決まった人に支給される給付金です。条件を満たせば、失業手当の残り分の一部を一時金として受け取れます。
支給額は「支給残日数×基本手当日額×支給率(60〜70%)」で計算され、早く再就職するほど受け取れる金額が多くなる仕組みです。
この制度は、失業中の生活を支えるだけでなく、「できるだけ早く職場に復帰してもらう」ことを目的として設けられています。例えば、支給残日数が多い段階で再就職すれば、より高い支給率(70%)が適用されるなど、早期再就職を後押しする仕組みが特徴です。
参考:厚生労働省「再就職手当のご案内(PDF)」
失業保険との違い
再就職手当と失業保険(雇用保険の基本手当)は、どちらも雇用保険から支給されますが、支給の目的やタイミング、受け取る条件が大きく異なります。
失業保険は「離職中の生活を支えるための制度」であり、求職活動を続ける間に一定の条件を満たして受け取ります。一方で、再就職手当は「早期に再就職した人への支援金」として、新しい職に就いた後にまとめて支給されるのが特徴です。
| 項目 | 失業保険 | 再就職手当 |
|---|---|---|
| 支給目的 | 離職中の生活支援 | 早期再就職の促進 |
| 支給タイミング | 求職活動中に分割支給 | 再就職後に一括支給 |
| 支給元 | 雇用保険 | 雇用保険 |
| 併給 | 不可 | 不可 |
このように、再就職手当は「早く働き始めた人が損をしないようにする」ための制度であり、失業保険との関係を知っておくと、再就職手当の仕組みがより理解しやすくなります。
参考:厚生労働省「基本手当について」
再就職手当の受給条件と支給額の目安
「早く就職したのに手当がもらえなかった」というケースも多く見られます。これは、再就職手当の支給には複数の条件があり、そのうち一つでも欠けると対象外になるためです。
ここでは、実際にどのような条件を満たす必要があるのか、支給額がどのように決まるのかを見ていきましょう。
受給条件の一覧
再就職手当の受給には、以下のような要件があります。
どれか一つでも欠けると支給されないため、事前によく確認しておきましょう。
- ハローワークに求職登録していること
⇒求職申込みをせずに就職してしまうと「ハローワーク経由の再就職」とみなされず、対象外になる場合があります。 - 7日間の待期期間を満了していること
⇒申請から7日以内に就職すると、制度上は「失業状態」とみなされません。 - 支給残日数が所定給付日数の1/3以上かつ45日以上あること
⇒例えば所定給付日数が90日の場合、30日以上残っている必要があります。 - 1年以上の勤務見込みがある職場であること
⇒短期契約でも、更新の可能性が明記されていれば対象になることがあります。 - 離職前の会社や関連会社に再雇用されていないこと
⇒グループ会社や関連法人も含まれる場合があるため注意が必要です。
これらの条件を満たしていれば、契約社員や派遣社員でも再就職手当の対象になります。
個人事業主として独立する場合は、再就職手当の対象外です。ただし、障害者や高年齢者など「就職困難者」に該当する場合は、別途「常用就職支度手当」などの制度が利用できることがあります。
支給率と金額の目安
支給率は、再就職した時点の「支給残日数」に応じて変わります。
▼再就職手当の支給率と条件
- 支給残日数が所定給付日数の3分の2以上
支給率は70%。
もっとも早い再就職で高額支給を受けられます。 - 支給残日数が所定給付日数の3分の1以上2分の3未満
支給率は60%。
比較的早い再就職でも対象となります。
例えば、基本手当日額が5,000円で、残り日数が60日の場合、「5,000円×60日×70%=210,000円」が支給額となります。
ただし、実際の支給額はハローワークの審査で決定されるため、試算ははあくまで目安と考えましょう。
申請の流れと必要書類
再就職手当を受け取るには、「申請期限」「提出書類」「書類の正確さ」が重要です。せっかく条件を満たしていても、書類の不備や提出遅れで支給されないケースもあります。
ここでは、手続きの流れを時系列で確認しておきましょう。
申請から支給までの流れ
申請は、再就職した日の翌日から1か月以内にハローワークで行います。
期限を過ぎると不支給になる場合があるため、早めの準備が大切です。
- 再就職が決定(離職前の会社以外)
- ハローワークに報告し、必要書類を受け取る
- 再就職先の事業主に証明欄を記入してもらう
- 書類をハローワークに提出
- 約1〜2か月後に支給決定・口座振込
審査の途中で確認が入ることもあり、処理が遅れるケースもあります。
書類はコピーを手元に残し、やり取りの履歴を保存しておくと安心です。
提出書類と注意点
主な提出書類は次の通りです。
- 再就職手当支給申請書(ハローワークで受け取り)
- 雇用保険受給資格者証
- 就職証明書または雇用契約書の写し
書類の内容に間違いがあると審査が遅れるため、特に「就職日」や「雇用保険の適用開始日」は正確に記載しましょう。
就職日と実際の勤務開始日が異なる場合も、ハローワークに相談すれば調整可能です。
再就職手当がもらえない主なケースと対処法
「自分は対象だと思っていたのに不支給だった」という例も多くあります。
ここでは、支給対象外になりやすいケースと、同じ失敗を防ぐための対処法を紹介します。
もらえない代表的なケース
| 不支給の理由 | 具体例 |
|---|---|
| 求職申込み前に就職していた | 求職登録前に内定・入社していた |
| 同一・関連事業主への再雇用 | 前職のグループ会社へ転職した |
| 雇用保険未加入の働き方 | 週20時間未満の勤務など |
| 雇用期間が1年未満 | 更新見込みがない短期契約 |
| 申請期限切れ | 就職日の翌日から1か月を過ぎて申請した |
これらのケースに該当すると、再就職手当が支給されない可能性があります。
ただし、契約更新の見込みや雇用保険加入条件を満たせば対象となることもあるため、不明点はハローワークに確認し、早めに相談しておくことが大切です。
審査で見られるポイント
ハローワークの審査では、主に次の点が確認されます。
- 雇用契約期間が1年以上見込まれるか
- 雇用保険に加入しているか
- 就職活動が本人の意思で行われたものか
- 書類内容に誤りや矛盾がないか
これらの基準に問題がある場合は、再提出や確認が必要となり、支給が遅れることもあります。
審査は「書面確認」が中心のため、書類内容の整合性を事前にチェックしておきましょう。
再就職手当がもらえない場合の代替制度
再就職手当を受け取れなかった場合でも、他の支援制度が利用できる場合があります。
働き方に合わせて、活用できる手当を確認しておきましょう。
代表的な代替制度の種類
再就職手当の条件を満たせなくても、次のような手当を受け取れる可能性があります。
▼主な代替制度
- 就業手当
短期間の勤務やパートタイムなど、雇用期間が1年未満の働き方をする人が対象。
再就職手当と異なり、就業中に日額で支給されるため、ブランクを空けずに働きたい人に適しています。 - 就業促進定着手当
再就職手当を受けたあと、同じ職場で6か月以上勤務し、賃金が下がった場合に追加支給される手当。
再就職後の生活を安定させる目的があり、長期的な定着をサポートします。 - 職業訓練受講給付金
すぐに再就職せず、スキルアップや資格取得のための職業訓練を受ける人を支援する制度。
一定の条件を満たすと、訓練期間中に生活費や交通費の給付を受けられます。
参考:ハローワークインターネットサービス「就職促進給付」
参考:厚生労働省「職業支援・給付金などについて知る|ハロトレ特設サイト」
再就職手当との違い
再就職手当が「早期に就職した人」を支援するのに対し、ほかの制度は「働き方」や「再就職後の状況」に合わせて支援する目的で設けられています。
▼再就職手当
- 再就職後に支給される(対象:早期再就職者)
- 例:離職後すぐに正社員として再就職した場合
- 目的:早期の職場復帰を促進
▼就業手当
- 就業中に支給される(対象:短期・パート勤務者)
- 例:1年未満の契約社員やパート勤務を始めた場合
- 目的:短期・非正規就業を支援
▼定着手当(就業促進定着手当)
- 就職6か月後に支給される(対象:賃金が下がった人)
- 例:再就職後の収入が前職より下がった場合
- 目的:再就職後の生活安定・職場定着を支援
これらの制度は、再就職のタイミングや雇用形態に応じて段階的に活用できる仕組みになっています。
まとめ
再就職手当は、失業保険の受給中に早期に再就職した人を支援する制度です。支給を受けるには、「1年以上の雇用見込み」「ハローワーク経由の求職活動」など、いくつかの条件を満たす必要があります。
早めに仕事が見つかっても、申請が遅れたり、条件を誤解していたりすると支給対象外になることもあります。就職が決まったらすぐにハローワークへ連絡し、必要書類の提出や手続き内容を確認しておきましょう。
また、条件を満たさず再就職手当が受け取れなかった場合でも、就業手当や就業促進定着手当、職業訓練受講給付金など、他の支援制度を活用できる場合があります。
自分の働き方や状況に合わせて制度を組み合わせれば、再スタートをより安定して迎えられます。



