65歳以上で仕事を辞めたとき、「自己都合退職でも高年齢求職者給付金はもらえるの?」と疑問に思う方は多いでしょう。
実はこの給付金は、自己都合でも一定の条件を満たせば受給できる制度です。ただし、離職票の記載内容や「失業の状態」の判定によっては、申請しても支給されないケースがあります。
この記事では、自己都合でも受け取れる条件や注意点、手続きの流れをわかりやすく解説します。失業保険(雇用保険の基本手当)との違いや退職タイミングの考え方も整理するので、65歳以降の生活設計に役立ててください。
結論|自己都合でも受給できるが「失業の状態」がカギ
退職後の生活を考えると、「自己都合でも高年齢求職者給付金がもらえるのか?」と気になる方は多いでしょう。結論から言えば、自己都合退職であっても一定の条件を満たせば受給可能です。
まずは、自分が対象となるかどうかを確認してみましょう。
受給できる条件を確認しよう
高年齢求職者給付金は、65歳以上の方でも「求職活動を行う意思」がある人が対象です。
受給にはいくつかの条件があるため、事前にチェックしておくことが大切です。
▼主な受給条件
- 離職の日以前の1年間に、雇用保険の被保険者期間が通算6か月以上ある
- 退職時に65歳以上である
- 働く意思と能力があり、求職活動をしている
- ハローワークで求職の申込みをしている
これらの条件は、単に形式的な基準ではなく、「働く意思を持ち、再就職を目指しているかどうか」を確認するために設けられています。例えば、6か月以上の加入期間が求められるのは、雇用保険の被保険者として実際に働いていた実績を判断するためです。
条件を満たしていても、求職活動をしていなければ受給対象にならない点に注意しましょう。
参考:厚生労働省「離職されたみなさまへ<高年齢求職者給付金のご案内>(PDF)」
受給対象外になる場合もある
一方で、条件を満たしていても「失業状態」とみなされないケースもあります。
該当する場合は、申請しても支給されない可能性があるため注意が必要です。
▼対象外となる主なケース
- 離職後に同じ会社へ再雇用される予定がある
- 次の就職先が決まっている、または自営業を始める準備をしている
- 病気・けが・妊娠・出産などで働けない状態
- 家事や学業、介護などの理由で求職活動を行わない
対象外に該当すると、申請を行っても受給資格が認められず、給付金は支給されません。また、退職後に一時的なアルバイトや自営業準備をしている場合も「就業している」と判断される可能性があります。
ハローワークでの申告内容によって結果が変わることがあるため、疑問があれば早めに相談しておくことが大切です。
制度の概要と支給内容
高年齢求職者給付金は、一般の失業保険とは異なり、一括で支給される制度です。
支給対象や日数、給付制限の有無など、基本情報を整理しておきましょう。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象年齢 | 65歳以上で離職した方 |
| 被保険者期間 | 離職の日以前1年間に6か月以上 |
| 支給日数 | 1年未満:30日分/1年以上:50日分 |
| 支給形態 | 一括支給(まとめて受給) |
| 給付制限 | なし(自己都合でも同様) |
| 待期期間 | 7日間(全員共通) |
離職票の「理由欄」が重要|誤記やズレの対処法
受給可否を左右するのが、離職票に記載された「離職理由」です。この欄の内容はハローワークが受給資格を判断するうえで重要なため、誤りがあると不利になる場合があります。
記載内容を必ず確認し、事実と違う場合は早めに対応しましょう。
特定理由離職者に該当する自己都合の例
自己都合退職であっても、やむを得ない事情がある場合は「特定理由離職者」として扱われます。これは、一見自己都合に見える退職でも、実際には特例として給付制限が免除されるなどの優遇措置を受けられる仕組みです。
該当する場合、手続きがスムーズに進み、給付までの負担が軽減されるのが特徴です。
▼特定理由離職者となる主なケース
- 病気や体力の低下など、健康上の理由で退職した
- 家族の介護や看護のために離職した
- 配偶者の転勤により転居せざるを得なかった
- 会社が遠方に移転し、通勤が困難になった
- 契約期間の満了(雇止め)で再契約がなかった(※この場合は「特定受給資格者」として扱われる)
参考:ハローワークインターネットサービス「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要」
離職理由が違っていたときの訂正手続き
離職票の記載が実際の退職理由と異なる場合は、ハローワークで訂正を申し立てることが可能です。特に「会社都合に近い事情なのに自己都合と記載された」場合は、早めの対応が大切です。
訂正の流れは次の通りです。
- 離職票を確認:受け取ったらすぐに理由欄をチェック。
- 証拠の準備:診断書、退職届、上司とのメールなど客観的な証拠を用意。
- ハローワークで申立て:求職申込み時に異議がある旨を伝え、証拠を提出。
- 調査と判断:ハローワークが会社に確認し、最終的な離職理由を決定。
64歳退職と65歳退職の違い|どちらが得か比較

退職のタイミングによって、もらえる給付金の制度が異なります。
65歳を境に「失業保険」から「高年齢求職者給付金」に切り替わるため、比較して違いを理解しておきましょう。
失業保険と高年齢求職者給付金の違い
2つの制度は支給方法・日数・再就職手当の有無などが異なります。
どちらが自分に合うかを判断する際の参考にしてください。
| 項目 | 64歳11か月まで(失業保険) | 65歳以上(高年齢求職者給付金) |
|---|---|---|
| 支給方法 | 分割支給(4週ごと) | 一括支給(30日または50日分) |
| 支給日数 | 最大150日など(加入期間による) | 30日または50日分 |
| 再就職手当 | あり | なし |
| 給付制限 | 自己都合は1〜3か月の制限あり | なし |
| 支給スピード | 徐々に支給 | 待期7日終了後、支給決定を経て一括振込(実際の振込までは数週間かかる場合あり) |
参考:厚生労働省「基本手当について」
退職日を決めるときの注意点
65歳到達の「基準日」は誕生日の前日であるため、例えば4月1日生まれの方は3月31日に65歳となります。
この扱いによって、どの制度が適用されるかが変わります。
- 雇用契約の満了日が65歳以降なら、高年齢求職者給付金の対象
- 再雇用契約をすぐに結ぶ場合は、実質的に雇用が続いていると判断されることがある
なお、同じ会社で定年後に嘱託や再雇用契約を結ぶ場合、形式上は一度退職していても「雇用が継続している」と見なされるケースがあります。この場合、高年齢求職者給付金の対象外となることがあるため、契約日や退職日の扱いを事前に人事担当者へ確認しておくと安心です。
申請時の注意点と不支給を防ぐポイント
高年齢求職者給付金を受け取るには、期限内に正しい手続きを行うことが重要です。
申請の流れを確認し、不備がないよう準備を整えましょう。
申請から受給までの流れを整理
申請から受給までの基本ステップは5段階です。
それぞれの手続きでミスを防ぐために、順を追って確認しておきましょう。
- 退職:会社から「離職票-1」「離職票-2」を受け取る。
- 求職申込み:ハローワークで求職申込みと書類提出を行う。
- 受給資格の決定:離職理由や勤務期間などを確認。
- 待期期間(7日間):全員に共通する確認期間。
- 給付金の振込み:受給資格が決定後、指定口座に一括振込。
なお、通常の失業保険のような4週ごとの「失業認定」は不要です。
申請に必要な書類と準備のポイント
書類の不備や紛失は、受給が遅れる原因になります。
申請前に以下の書類を揃えておきましょう。
- 離職票-1、離職票-2
- 個人番号確認書類(マイナンバーカードなど)
- 本人確認書類(運転免許証など)
- 本人名義の通帳またはキャッシュカード
- 証明写真(マイナンバーカード提示の場合は不要)
書類の提出に不備があると、再提出や確認のために給付が遅れることがあります。特に離職票や本人確認書類の記載内容に誤りがあると、支給決定までに1〜2週間以上かかるケースもあります。
提出前にハローワークのチェックリストで再確認しておくと安心です。
よくある申請ミスとその防止策
申請時のトラブルは、多くが「書類の遅延」や「情報の不一致」によるものです。
次の3点に注意すれば、スムーズに受給できます。
- 離職票が届かない場合:退職後10日以上経っても届かないときは会社またはハローワークに確認。
- 証拠の不足:離職理由に異議がある場合は、診断書や勤務記録を用意。
- アルバイトの未申告:待期期間中に働いた場合は必ず申告。無申告は不正受給とみなされる可能性あり。
まとめ
高年齢求職者給付金は、自己都合で退職した場合でも受給できる制度です。ただし、離職理由の記載や申請書類の不備など、手続き上のミスがあると支給されないこともあります。
65歳以降の生活を安定させるためには、制度の仕組みを正しく理解し、できるだけ早めに申請を進めることが大切です。不明点がある場合は、一人で抱え込まず、ハローワークに相談して確認しながら進めるとよいでしょう。



