退職タイミングはいつがベスト?社会保険料や賞与、失業給付で損しない方法を解説

退職タイミングは、感情的な判断ではなく経済・キャリア・人間関係の3つの軸から戦略的に選択することが重要です。退職日を月末にするか月中にするかで社会保険料が1ヶ月分変わり、賞与支給日の前後で数十万円の差が生まれます。

この記事では、退職タイミングを決める3つの軸、ケース別のおすすめ退職タイミング、損するタイミングと回避策、よくある質問まで解説します。

退職タイミングを決める3つの軸

退職日を決める際は、感情的な判断ではなく、経済、キャリア、人間関係の3つの軸から、最もメリットの大きいタイミングを戦略的に選択することが重要です。

タイミング1|手取りを最大化させてから

手取り額を最大化するには、賞与(ボーナス)の支給条件を満たすことと、社会保険料の支払い義務を適切に調整することが鍵となります。特に社会保険料は、退職日を月末にするか、月中(月末の1日前)にするかで、1ヶ月分の支払い義務が変わってきます。

また、残っている有給休暇をすべて消化してから退職日を迎えることも、手取りを増やす上で必須です。

タイミング2|キャリアが途切れないように調整する

転職活動が成功し、次の内定を得た場合は、新しい会社の入社日を考慮して退職日を決めます。

現在の職場での引継ぎ期間と有給消化期間を逆算し、キャリアの空白期間(ブランク)が生まれないように調整しましょう。転職先に迷惑をかけないよう、余裕を持ったスケジュールを組むことが大切です。

タイミング3|プロジェクトの区切りや繁忙期を終えてから

円満退職を目指すためには、会社の状況や同僚への配慮も欠かせません。担当していたプロジェクトの区切りがついた後や、決算期などの繁忙期を避けて退職することで、引継ぎがスムーズになり、人間関係を良好なまま退職できます。

これにより、退職後も良好な関係を維持できる可能性が高まります。

ケース別!おすすめ退職タイミング早見表

ご自身の退職後の計画に合わせて、最も有利な時期と日を判断しましょう。

ケース優先すべきゴールおすすめの退職タイミング
次の内定あり社会保険料節約・キャリア継続月末の1日前
(例:3月30日)
失業給付を早く受けたい早期受給開始自己都合の給付制限期間(原則1ヶ月)を考慮して逆算
賞与を取り切りたい経済的メリット最大化賞与支給日後の最短日
体調不良で休職中公的給付の確保傷病手当金の継続条件を満たしてから退職
産休・育休と絡む給付金と社会保険料免除産休・育休給付の在籍要件を確認

【 ケース1|次の内定あり】内定日→引継ぎ1~2か月→月末退職が基本

次の転職先がすでに決まっている場合、最も優先すべきは「社会保険料の節約」と「キャリアの連続性」です。

内定先での入社日の前日を退職日とし、特に翌月1日から入社する場合は、月末の1日前に退職日を設定するのが最もお得です。こうすることで、旧会社分の社会保険料(健康保険・厚生年金)の1ヶ月分の負担がなくなる上、翌月1日からは新しい会社の保険に加入するため、保険証の空白期間や国民健康保険料の支払いを完全に回避できます。

参考:日本年金機構「退職した従業員の保険料の徴収

【ケース2|失業給付を早く受けたい】自己都合は給付制限考慮で逆算

失業保険(雇用保険の基本手当)は、自己都合退職の場合、待機期間(7日間)の後に原則1ヶ月の給付制限期間が設けられます(※2025年4月1日以降)。

給付制限期間を最短で終え、早く受給を開始するためには、ハローワークへの申請日や待機期間を考慮し、退職日から逆算してスケジュールを組む必要があります。特に退職理由が「やむを得ない自己都合」(体調不良など)で、給付制限が短い「特定受給資格社・特定理由離職者」に該当する可能性がある場合は、その証拠(診断書など)を揃えることも重要です。

参考:厚生労働省「基本手当を受給される皆様へ

【ケース3|賞与を取り切りたい】賞与支給日後の最短月末退職

ボーナス(賞与)を満額受け取るためには、多くの企業で規定されている「支給日に在籍していること」という条件を確実に満たすことが絶対です。

したがって、ボーナス支給日以降に退職日を設定します。さらに、ボーナスからも控除される社会保険料を節約したい場合は、支給日後の最短の月中(月末の1日前)に退職することで、経済的なメリットを最大化できます。

【ケース4|体調不良で休職中】傷病手当金の継続条件を満たしてから退職

病気療養中や休職中に退職する場合、退職後も傷病手当金(最長通算1年6ヶ月)を受け取るには厳格な条件があります。

条件
  • 資格喪失日の前日(退職日)までに継続して1年以上の被保険者期間があること
  • 資格喪失日の前日(退職日)に、現に傷病手当金を受けているか、受けられる状態であること
  • 退職日に出勤していないこと

これらの条件を必ず確認し、退職届を提出した後も療養に専念し、退職日には挨拶も含めて出社しないよう徹底する必要があります。

参考:全国健康保険協会「傷病手当金

【ケース5|産休・育休と絡む】育休給付・社会保険免除の在籍要件を確認

産前産後休業や育児休業の給付金、および社会保険料の免除といったメリットを最大限に享受するためには、休業開始日と退職日の関係が非常に重要です。

給付金制度の要件(例:育休開始前に2年間のうち12ヶ月以上の被保険者期間があるなど)を満たしているか、また、休業期間が終了する前に退職すると給付がストップしたり、社会保険料の免除が遡って取り消されたりするリスクがあるため、事前に会社の労務担当者や健康保険組合に確認する必要があります。

参考:厚生労働省「育児休業等給付について

損する退職タイミングと回避策

退職日をわずかに間違えるだけで、数十万円単位で損をしたり、権利を失ったりする場合があります。ここではそのよくある例と回避策を紹介します。

賞与の在籍要件を1日違いで逃す

多くの企業では「支給日に在籍していること」をボーナス支給の絶対条件としています。支給日の前日に退職日を設定してしまうと、それまでの努力が水の泡となるため、必ず就業規則の賞与規定を確認しましょう。

月初退職で社会保険料を1か月余分に負担

月初(例:4月1日)に退職し、次の就職先が決まっていない場合、退職月の社会保険料は発生しませんが、その月の国民健康保険料と国民年金保険料を自分で支払う必要があります。

一方、月末(例:3月31日)に退職すれば、退職月(3月)の社会保険料は会社が半分負担してくれますが、翌月(4月)からは国民健康保険と国民年金に加入する必要があります。つまり、月初退職は、社会保険料の自己負担額が増える可能性があるため、注意が必要です。

有給の消化計画が遅れて買い取り不可に

労働者に残された有給休暇を会社が買い取る義務は原則ありません。退職日までに残りの有給をすべて消化しきれない場合、その有給は消滅します。有給残日数を正確に把握し、退職申告と同時に最終出社日までの消化計画を立てましょう。

離職票の理由ミスで失業給付が不利

退職理由が「パワハラ、病気療養などによるやむを得ない自己都合」であるにもかかわらず、会社が「単なる自己都合」として離職票に記載すると、失業保険の給付制限期間(原則1ヶ月)が課されます。必ず離職票の内容を確認し、事実と異なる場合はハローワークで異議申し立てを行いましょう。

退職タイミングに関するよくある質問

ここでは、退職タイミングに関するよくある質問を紹介します。

転職先の入社日が月中/月初の場合は?
転職先が決まっている場合は、入社日の前日が退職日となるように調整します。例えば、入社日が4月1日(月初)であれば3月31日退職、入社日が4月15日(月中)であれば4月14日退職が基本です。

社会保険料を節約したいなら、月末の1日前(例:3月30日)に退職し、4月1日から新しい会社に加入できるよう調整するのがベストです。
派遣・契約社員の更新月に合わせるべき?
はい、原則として契約更新月の前月に退職を申し出るのが望ましいです。契約期間途中で退職すると、契約違反となり損害賠償を請求されるリスク(非常に稀ですが)や、引継ぎが困難になる場合があります。

更新しない意向は、契約満了の1〜2ヶ月前までに派遣会社や勤務先に伝えましょう。
在宅勤務中でも引継ぎはどれくらい必要?
引継ぎに必要な期間は、業務の専門性にもよりますが、通常は1〜2ヶ月が目安です。在宅勤務であっても、引継ぎは対面時と変わらず重要です。引継ぎ中は業務日誌やマニュアルを作成し、オンライン会議を通じて後任者に説明する時間を確保しましょう。

退職申告時に、引継ぎ計画表を作成し、会社に提示することで円満な退職につながります。

まとめ

退職タイミングを決める3つの軸は、手取りを最大化させる、キャリアが途切れないように調整する、プロジェクトの区切りや繁忙期を終えてからです。手取り最大化には賞与の支給条件を満たすことと、社会保険料の支払い義務を適切に調整することが鍵で、退職日を月末にするか月中にするかで1ヶ月分の支払い義務が変わります。

ケース別のおすすめ退職タイミングは5つです。次の内定ありは月末の1日前退職で社会保険料を節約、失業給付を早く受けたいは自己都合の給付制限期間を考慮して逆算、賞与を取り切りたいは賞与支給日後の最短月末退職、体調不良で休職中は傷病手当金の継続条件を満たしてから退職、産休・育休と絡むは育休給付・社会保険免除の在籍要件を確認します。

損する退職タイミングと回避策は、賞与の在籍要件を1日違いで逃す、月初退職で社会保険料を1か月余分に負担、有給の消化計画が遅れて買い取り不可、離職票の理由ミスで失業給付が不利になるの4つです。

転職先の入社日が決まっている場合は入社日の前日が退職日となるように調整し、社会保険料を節約したいなら月末の1日前に退職するのがベストです。退職タイミングで損をしたくない方はぜひ参考にしてみてください。

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