失業保険をもらいながら週20時間以内で働くのは大丈夫?減額・申告・注意点を徹底解説

失業保険(雇用保険の基本手当)を受け取りながら働くことは可能ですが、勤務時間や収入の条件を超えると支給停止や減額の対象になることがあります。

「週20時間以内なら大丈夫」と聞いたことがある方も多いかもしれませんが、実際にはケースごとに判断されるため注意が必要です。

ここでは、働きながら失業保険を受け取る際のルール・減額の仕組み・申告方法・注意点をわかりやすく解説します。

失業保険をもらいながら働くことはできる?

失業保険の目的は、失業中の生活を支えながら再就職を促すことです。そのため、一定の範囲内で働くことは認められていますが、働き方によっては「就職」とみなされることもあります。

まずは「失業状態」とみなされる条件と、週20時間ルールの考え方を確認しておきましょう。

参考:厚生労働省「基本手当について

「失業状態」とは?週20時間ルールの基本

失業保険を受け取るためには、「働く意思と能力があり、積極的に求職活動をしている」状態であることが前提です。そのため、働いていても一時的な就労や収入がわずかな場合には支給が継続されます。

ハローワークでは、以下のような基準を参考に失業状態かどうかを判断します。

判定基準の目安

  • 1日の労働時間: 4時間以上は就労扱い、4時間未満は内職・手伝い扱い(収入に応じて減額の可能性)
  • 週の労働時間: 週20時間以上かつ31日以上の雇用見込みがある場合は就職扱い(支給停止の対象)
  • 雇用契約の期間: 31日以上の雇用見込みがあると就職扱いとなる場合あり
  • 就労形態: パート・単発・日雇いなどはケースごとの判断

つまり「週20時間以内なら確実にOK」というわけではなく、勤務の継続性や契約内容も重要な判断材料になります。

働いた日や収入で減額・支給停止になる仕組み

失業保険は、働いた日や得た収入の状況によって支給額が調整されます。

ここでは、1日の労働時間や収入がどのように支給に影響するのかを見ていきましょう。

1日4時間の線引きと認定日の考え方

失業保険では、働いた日分の手当は原則として支給がカットされます。1日4時間以上働いた場合は「就労」とみなされ、その日は支給対象外です。

ただし、手当が失われるわけではなく、受給期間内で後ろに先送りされる形で支給されます。一方で、4時間未満の短時間労働は「内職・手伝い」扱いとなり、収入額によって減額または不支給になることがあります。

就労日が多い場合、受給期間(原則1年)内にすべて支給しきれず、結果的に総支給額が減ることもあるため注意が必要です。

労働時間扱い支給への影響
4時間未満内職・手伝い支給対象(消化)だが、収入額に応じて減額または不支給になる場合あり
4時間以上就労その日分は支給なし
繰越(先送り)扱い
週20時間超常用的就労受給資格を失う可能性あり

また、認定日ごとに働いた日を報告します。先送りや減額の最終的な影響は、受給期間(原則1年)内に支給を受け切れるかと各日の収入額で変わります。

「週20時間未満」でも注意が必要なケース

週20時間未満でも、働き方次第では「実質就職」と判断される場合があります。

ここでは、特に誤解しやすい契約内容や副業パターンについて解説します。

契約更新や固定シフトなど「実質就職」と見なされる例

短期契約であっても、次のような勤務条件に当てはまる場合は、ハローワークで「実質的な就職」と判断されることがあります。

  • 1か月以上の雇用見込みがある
  • シフトが毎週固定されている
  • 雇用契約書に「更新あり」と記載されている

このような働き方の場合、失業保険の支給が止まり、再就職手当の対象になる可能性があります。

複数バイト・フリーランス収入の合算リスク

複数の短時間勤務を掛け持ちしている場合、週の合計労働時間で判断されます。それぞれが短時間でも、合計で20時間を超えると「失業状態に該当しない」と判断される可能性があります。

また、在宅ワークや業務委託などのフリーランス収入も、内容によっては「就労収入」として申告が必要です。専属契約や指揮命令を受ける働き方の場合、実質的に雇用とみなされることもあるため注意しましょう。

申告ルールと不正受給のリスク

働いた事実や収入は、認定日に必ず申告する義務があります。「少しだから大丈夫」と自己判断すると、不正受給とみなされるおそれがあるため注意が必要です。

ここでは、正しい申告のしかたと、違反時のリスクをそれぞれ解説します。

働いたときの正しい申告方法

失業保険を受給中に働いた場合は、勤務時間や収入を必ず申告しなければなりません。申告は4週間ごとの「失業認定申告書」に記入し、認定日にハローワークへ提出します。

その際、以下のような書類を準備しておくとスムーズです。

  • 給与明細や報酬の振込明細
  • タイムカードやシフト表
  • 「就労・内職証明書」(雇用主記入)

書類が手元にない場合でも、できる範囲でメモや勤務記録を残し、後日補足資料として提出できます。

交通費などの扱いは、実費精算かどうかで異なる場合があります。迷ったときは所轄ハローワークに確認しましょう。

申告漏れ・虚偽報告が発覚した場合の対応

もし申告を忘れた場合は、次の認定日前にハローワークへ正直に申告しましょう。意図的な虚偽でなければ、注意指導で済むことが多いです。

ただし、申告漏れを放置すると「不正受給」と判断され、次のような厳しい処分が科されます。

処分内容概要
支給停止不正が発覚した時点で手当の支給が止まる
返還命令不正に受け取った分を全額返還
納付命令不正受給額の最大2倍の追徴金(最大3倍返し)
受給資格制限将来の雇用保険給付も一定期間停止

扶養・社会保険・税金の影響

失業保険を受け取りながら働く場合、社会保険や扶養の条件に影響することがあります。特に配偶者の扶養に入っている人は、年収や働き方によって扶養から外れる可能性もあるため注意が必要です。

ここでは、「税法上の扶養」と「社会保険上の扶養」それぞれの考え方を見ていきましょう。

税法上の扶養の考え方

税法上の扶養は、合計所得48万円(給与収入103万円相当)以下が目安です。基本手当は非課税なのでこの枠に含めません。

そのため、アルバイト収入が基準内であれば、失業保険を受け取っていても税法上の扶養にとどまることが可能です。

社会保険上の扶養の考え方

社会保険では、年収130万円未満(60歳未満の場合)が扶養の目安です。失業保険の基本手当も収入に含まれるため、日額3,611円以下なら扶養内、3,612円以上は扶養対象外が目安とされています。

2025年10月1日以降は、19歳以上22歳以下(19〜22歳)の方について、年間収入150万円未満まで扶養に入れるルールが適用されます。心当たりがある場合は、勤務先や健康保険組合に確認しておきましょう。

参考:国税庁「No.1180 扶養控除

参考:日本年金機構「19歳以上23歳未満の方の被扶養者認定における年間収入要件が変わります

再就職・収入拡大を目指す場合の切り替え方

「週20時間以内で働きつつ、いずれは再就職を」と考えている方も多いでしょう。

ここでは、再就職手当の活用方法と、生活が厳しいときの支援制度を紹介します。

再就職手当の活用

週20時間以内で働いていても、次の職が正式に決まった時点で失業保険の支給は止まり、条件を満たせば再就職手当の対象となります。再就職手当とは、失業保険の支給残日数が3分の1以上ある状態で、1年以上の雇用見込みがある職に就いた場合に支給される制度です。

給付制限がある場合は、求職申込みをして待期が明けた日から1か月以内に就職するなら、ハローワークまたは職業紹介事業者の紹介による就職であることが条件です。

支給率は、残日数が3分の2以上の場合で基本手当日額の70%、3分の1以上2分の3未満の場合で60%が目安です。早期に再就職するほど受け取れる割合が高くなるため、長期的に働ける見込みがある場合は再就職手当の申請を検討しましょう。

就職が決まったら、早めにハローワークへ連絡し、申請期限(原則1か月以内)を過ぎないよう注意が必要です。

参考:厚生労働省「再就職手当のご案内(PDF)

生活が厳しいときの支援制度

収入が減って生活費のやりくりが難しい場合は、公的な貸付・支援制度を活用する方法もあります。

代表的な制度としては以下の3つがあります。

代表的な支援制度

  • 緊急小口資金: 原則10万円程度を上限とする無利子貸付制度(地域や時期により上限拡大あり)
  • 総合支援資金: 原則3か月分を目安に貸付を行う生活費支援制度(貸付額・期間は自治体の判断で異なる)
  • 生活福祉資金: 低所得世帯や失業者を対象とした長期生活再建のための貸付制度

これらの制度は、各自治体の社会福祉協議会で相談・申請できます。無利子や返済猶予が設けられている場合もあるため、返済が不安な人でも利用しやすい仕組みです。

上限金額や貸付期間は、自治体や申請時期によって異なるため、最新の条件をお住まいの社会福祉協議会で確認しましょう。

参考:厚生労働省「生活福祉資金貸付制度

まとめ

失業保険をもらいながら週20時間以内で働くことは可能ですが、勤務内容や契約形態によっては支給停止になるリスクもあります。大切なのは「時間」ではなく、働き方の実態と申告の正確さです。

迷ったときはハローワークに確認し、記録と申告を徹底することでトラブルを防げます。短期的な収入確保だけでなく、再就職への準備や公的支援も並行して検討しましょう。


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