退職後に失業保険を受給するために必要な「離職票」ですが、「記入例や見本を見ながら正しく書きたい」と感じる方は少なくありません。離職票は失業保険の給付額や給付開始時期を決める極めて重要な書類であり、記載内容に誤りがあると、本来受けられるはずの給付を受けられなくなる可能性があります。
この記事では、離職票-1と離職票-2の具体的な見本を示しながら、正しい書き方と記入時の注意点を詳しく解説します。見本を確認しながら正確に記入し、適切な失業保険給付を受けるための準備を整えましょう。
離職票の見本と書き方を詳しく解説
離職票-1と離職票-2は、失業給付を受ける際に必要な書類です。どちらも退職時に会社経由で発行され、退職者自身が記入するべき欄と、会社が記入する欄があります。見本や書き方を確認しながら、正しく記入しましょう。
離職票-1の見本と書き方

画像引用元:ハローワーク「記入例:雇用保険被保険者離職票-1」
雇用保険被保険者離職票-1の主な内容には、「氏名」「生年月日」「住所」「被保険者番号」「退職日」「振込希望口座」などがあります。退職者が書くのは「求職者給付等払渡希望金融機関指定届」の欄です。(給付金振込先口座を記入する欄)
氏名、生年月日、被保険者番号といった基本情報に加え、退職日、会社名、事業所番号、そして失業手当の振込先口座を記入します。「個人番号」の欄は、ハローワークでの申請時に窓口で記入する必要があるため注意しましょう。
離職票-2の見本と書き方
画像引用元:ハローワーク「記入例:雇用保険被保険者離職票-2」
雇用保険被保険者離職票-2には、主に「退職理由」「賃金額」「雇用期間」「離職前6カ月の賃金明細」などが記載されています。
左側は会社側が記入済みとなっており、退職者が記入するのは右側のページです。離職理由のところが、会社側と本人側で記入欄が分かれています。「離職理由」の横にある「離職者記入欄」の該当箇所に丸印をつけてください。
また、「具体的事情記載欄(事業主用)」の内容を確認し、問題がなければ(離職者用)の欄に「同上」と記載します。会社側が記入した離職理由に異議がある場合は、「異議あり」の欄に丸印をし、本人側の欄に具体的な事情を記入しましょう。
離職票-2の会社記入欄(離職理由、賃金など)は給付内容に大きく影響します。届いたら必ず内容を確認し、間違いや不公平な記載があれば異議申立て・具体的経緯の記載をしましょう。
離職票に書かれる離職理由の種類と見本例
離職票(特に離職票-2)に記載される退職理由は、大きく分けて「会社都合」「自己都合」「特定理由離職」の3パターンに区分され、失業保険の給付額や制限に直結します。具体的な記入例も併せて解説します。
種類1|会社都合退職(特定受給資格者)の離職理由
会社都合の退職には、倒産、解雇、リストラ、退職勧奨、事業継続が不可能(天災等)、契約期間満了(更新なし、業務終了等)などが含まれます。
- 「解雇」
- 「会社都合による人員整理のための退職」
- 「希望退職募集による応募」
- 「契約満了による終了」
- 「事業所移転に伴い勤務継続困難」
離職票-2には、「会社都合」と記載し、具体的な理由を簡潔に書き添えましょう。
種類2|自己都合退職(一般受給資格者)の離職理由
一身上の都合(転職、家庭の事情、転居、妊娠・出産・育児、介護、職場環境への不満※)、定年退職など、自身の都合で退職する場合は、「自己都合」と記載します。
- 「一身上の都合により離職」
- 「定年退職」
- 「自己都合:キャリアアップのため」
「一身上の都合により」でも構いませんが、転職の場合は「転職のため」、家庭の事情の場合は「家庭の事情のため」のように具体的に記載する方が望ましいです。
※正当な理由ではない場合
種類3|特定理由離職者(特定理由離職者)の離職理由
病気・けが・心身障害・家族の介護・配偶者転勤・通勤困難・契約期間満了(雇止め)等、やむを得ない事情や正当な理由によって退職する場合は、それぞれの理由を具体的に記載する必要があります。
- 「介護のため通勤困難になり離職」
- 「健康上の理由により業務継続不可」
- 「雇用契約期間満了による離職」
「健康上の理由のため」や「家族の介護のため」と記載する場合は、必要に応じて医師の診断書などを添付しましょう。
離職票の記載時に注意すべき3つのポイント
会社から受け取る離職票は、失業保険の給付額や給付開始時期を決めるための非常に重要な書類です。内容に誤りがあると、本来受けられるはずの給付を受けられなくなる可能性があるため、ハローワークに提出する前に、必ず以下の3つのポイントを確認してください。
ポイント1|「退職理由」の内容が事実と合っているか
離職票の中で最も重要なのが「退職理由」の欄です。この内容によって、失業保険がいつから・どれくらいの期間もらえるかが決まるため、事実と合っているかを厳しくチェックする必要があります。
離職票-2には、会社側が記載した離職理由と、それに対して本人が同意するかどうかを示す欄があります。例えば、「自己都合退職」とされているけれども、実際は会社の業績不振による退職勧奨や契約期間満了(雇止め)だったというケースは少なくありません。
会社が記載した理由に納得できない場合は、「離職者本人の判断」欄にある「異議有り」に丸をつけた上で、下部にある「具体的事情記載欄(離職者用)」に、ご自身の認識する具体的な退職経緯を記入します。
最終的な判断はハローワークが行いますが、ここで異議を申し立てなければ、会社都合であったとしても自己都合として扱われてしまう可能性があるため、非常に重要です。
ポイント2|「雇用期間」「賃金額」など計算の基礎が正しいか
失業保険の一日あたりの給付額(基本手当日額)は、退職直前6ヶ月間の給与を基に計算されます。そのため、離職票-2に記載されている「賃金額」が正確であるかを確認してください。
具体的には、「離職日以前の賃金支払状況」の欄にある、退職前6ヶ月間の賃金額(A)と、それに対応する基礎日数(B)を給与明細と照らし合わせ、間違いがないかチェックします。ここには残業代や各種手当も含まれますが、賞与(ボーナス)は含まれません。
この金額が実際よりも低く記載されていると、受け取れる失業保険の総額が減ってしまうため、念入りに確認しましょう。また、「被保険者期間算定対象期間」の欄も、ご自身の雇用期間と相違ないかを確認することが大切です。
ポイント3|本人記入欄・署名に記載もれがないか
離職票は、会社が記載する部分と、ご自身で記入する部分があります。提出前に、本人記入欄に漏れがないかを必ず確認してください。
特に重要なのが、離職票-2の最下部にある署名欄です。ここに署名または記名押印がないと、書類として受理されません。また、先述の通り、会社の記載した退職理由に異議があるかどうかの意思表示(「異議有り」または「無し」に丸をつける)も忘れずに行いましょう。
加えて、失業保険の振込先となる金融機関の口座情報を記入する欄(離職票-1)も、正確に記入されているか、提出前にもう一度確認することをおすすめします。
まとめ
離職票は失業保険の給付額や給付開始時期を決める極めて重要な書類です。離職票-1では振込先口座の記入、離職票-2では退職理由への同意・異議の意思表示が主な記入項目となります。特に退職理由の記載内容は、会社都合・自己都合・特定理由離職者の区分によって給付条件が大きく変わるため、慎重な確認が必要です。
最も注意すべきは退職理由の正確性です。実際は会社都合での退職であったにもかかわらず、自己都合として記載されているケースも少なくありません。事実と異なる場合は必ず「異議有り」に丸をつけ、具体的事情を詳しく記載しましょう。また、給付額の計算基礎となる賃金額や雇用期間についても、給与明細と照らし合わせて間違いがないか確認することが重要です。
離職票の記載内容は後から修正が困難な場合が多いため、受け取った時点で見本を参考にしながら丁寧にチェックし、疑問点があれば速やかにハローワークに相談することをおすすめします。正確な記載により、適切な失業保険給付を受けることができます。