失業保険の再就職手当とは、失業保険(正式には「雇用保険の基本手当」)を早期に終了して再就職した際に支給される給付金です。残りの失業保険給付日数の60〜70%相当額を一括で受け取ることができ、就職活動を促進する制度として設けられています。
この記事では、再就職手当の受給条件から金額計算、申請方法、注意点まで詳しく解説します。転職を検討中の方は、ぜひ参考にしてください。
再就職手当とは?失業保険を早くもらい終えた人へのボーナス制度
再就職手当は、失業保険受給中に早期就職を果たした人に対して支給される一時金です。
失業保険を最後まで受給するよりも、早期に就職した方が経済的にメリットがあるよう設計されており、就職活動を促進する目的で設けられています。
参考:厚生労働省「再就職手当について」
制度の目的と受給条件

再就職手当は、失業保険の受給資格者が早期就職することを促進するための制度です。
離職理由が自己都合・会社都合・派遣契約終了・短期雇用終了を問わず、以下の条件を満たせば受給可能です。
受給条件
- 基本手当の受給手続き後、7日間の待機期間を経過していること
- 基本手当の支給残日数が所定給付日数の3分の1以上あること
- 就職日の前日までに基本手当の支給を受けていること
- 再就職先が、前職の会社や関連事業主(子会社・関連会社・出向先など)でないこと
- 1年以上の雇用が継続される見込みがあること
- 過去3年以内に再就職手当や常用就職支度手当を受給していないこと
- 自己都合退職者の場合、待機期間後1か月間はハローワークまたは職業紹介事業者経由での就職であること
自己都合退職者には特別な制約があり、2025年4月以降は給付制限期間が2か月から1か月に短縮されました。この給付制限期間中(待機期間後1か月間)に再就職する場合は、個人での就職活動による内定では再就職手当の対象外となり、必ずハローワークの紹介または厚生労働大臣許可の職業紹介事業者(人材紹介会社など)を通じて就職する必要があります。
なお、給付制限期間を経過した後に就職した場合は、自己応募でも再就職手当の対象となります。
再就職手当と基本手当の関係
基本手当と再就職手当の違いは、以下のとおりです。
項目 | 基本手当 | 再就職手当 |
---|---|---|
受給時期 | 失業中の生活保障 | 早期就職時の一時金 |
支給方法 | 4週間ごと分割 | 一括支給 |
支給期間 | 所定給付日数まで | 就職時1回のみ |
支給率 | 日額×100% | 日額×60〜70% |
受給条件 | 失業状態継続 | 早期就職実現 |
基本手当は失業中の生活保障として継続的に支給されますが、再就職手当は早期就職を促進するインセンティブとして一時金で支給されます。
両制度は併用できませんが、早期就職により再就職手当を選択することで、結果的に基本手当をすべて受給するよりも多くの給付を受けられる場合があります。
いくらもらえる?再就職手当の金額と計算例
再就職手当の支給額は、基本手当の支給残日数と支給率によって決まります。支給残日数が多いほど高い支給率が適用され、より多くの給付を受けられます。
支給額は「残り日数×60〜70%」
再就職手当の支給額は以下の計算式で算出できます。
支給額の計算方法
- 基本手当日額×支給残日数×支給率(60%または70%)
- 支給残日数が所定給付日数の3分の2以上:支給率70%※
- 支給残日数が所定給付日数の3分の1以上3分の2未満:支給率60%※
- 基本手当日額の上限:60歳未満6,395円、60歳以上65歳未満5,170円(2025年8月31日まで適用)
支給率は残日数の割合で決まり、より早期に就職するほど高い支給率が適用されます。これにより、早期就職へのインセンティブが強化される仕組みです。
※所定給付日数の3分の1未満の残日数では支給対象外となるため、申請前に残日数の確認が重要です。
支給額のシミュレーション(年齢・残日数別)
具体的な支給額をパターン別でシミュレーションすると以下のとおりです。
35歳・基本手当日額6,000円・所定給付日数90日の場合
- 残日数60日(支給率70%):252,000円
- 残日数45日(支給率60%):162,000円
- 残日数30日(支給率60%):108,000円
50歳・基本手当日額7,000円・所定給付日数120日の場合
- 残日数80日(支給率70%):392,000円
- 残日数60日(支給率60%):252,000円
- 残日数40日(支給率60%):168,000円
同じ基本手当日額でも、残日数が多いほど支給額が増加し、特に所定給付日数の3分の2以上の残日数がある場合は支給率70%の適用により大幅な増額となります。
いつ・どうやってもらえる?申請手順と書類準備
再就職手当の申請には就職後の手続きが必要で、申請タイミングや必要書類の準備が重要です。
ここでは、支給までの流れとスケジュールを確認しておきましょう。
申請タイミングと必要書類
正式な書類提出の前に、まず就職が決まったら1ヶ月以内にハローワークに申し出ることが必要です。申請が遅れると支給を受けられなくなるため、就職が決定した段階で早めに準備を開始しましょう。
申請に必要な書類は以下のとおりです。
- 再就職手当支給申請書
- 雇用保険受給資格者証
- 採用証明書
- 就職日報告書
- 身分証明書
- 印鑑
- 振込先口座の通帳
採用証明書は再就職先の企業に記入してもらう必要があるため、内定通知を受けた段階で人事担当者に依頼しておくとスムーズです。また、自己都合退職者の場合は、ハローワークまたは許可された職業紹介事業者を通じて就職したことを証明する書類も必要になります。
支給までのスケジュールとハローワーク処理の流れ
申請から支給までの流れは以下のとおりです。
- 申請受付:就職日から1ヶ月以内
- 書類審査:約1週間
- 就職先確認:約1週間
- 支給決定通知:約1週間
- 振込実行:約1週間
合計で申請から約1ヶ月程度で支給されるのが一般的です。ただし、書類不備や就職先への確認に時間がかかる場合は、さらに時間を要することがあります。
ハローワークでは申請書類の形式的なチェックだけでなく、就職先企業への電話確認や雇用契約の実態確認も行われます。虚偽の申請や条件を満たさない就職の場合は支給されないため、申請前に受給条件を十分に確認することが重要です。
もらえない・返還になるケースと注意点
再就職手当は一度支給されれば、その後に退職したとしても返還義務はありません。ただし、申請時の条件や手続きに不備があると支給されない場合があるため、事前の確認が重要です。
早期離職や申請ミスによる返還リスク
再就職手当には基本的に返還義務がありませんが、以下のような場合は支給されない、または支給が停止される可能性があります。
支給されないケース
- 申請時の採用条件と実際の雇用条件が虚偽だった場合
- 1年以上の雇用継続見込みがないことが申請時に判明した場合
- 前職との関連性があることが申請時に判明した場合
- 申請書類に意図的な虚偽記載があった場合
- 申請期限(就職日から1ヶ月以内)を過ぎた場合
一度支給された再就職手当は、その後に早期離職したとしても返還する必要はありません。ただし、虚偽の申請や不正受給が発覚した場合は、後から返還を求められることがあります。
副業や就労条件の誤解に注意
再就職手当の受給条件には、副業や就労形態に関する誤解が生じやすい点があります。週20時間以上の雇用が継続される見込みがあることが条件であり、副業的な短時間勤務や業務委託契約での就労は対象外です。
また、派遣社員として就職する場合は、派遣元企業との雇用契約が1年以上継続する見込みがあることが必要で、単発の派遣業務では受給できません。
不明な点があれば、就職前にハローワークで確認することをおすすめします。
まとめ
再就職手当は、失業保険受給中に早期就職を果たした人に対して支給される一時金で、支給残日数×基本手当日額×60〜70%の金額を受け取れます。受給には複数の条件があり、特に自己都合退職者は2025年4月から短縮された給付制限期間中の就職制限に注意が必要です。
支給額は早期就職ほど高くなり、申請は就職日から1か月以内に行います。再就職手当には返還義務がないため、受給後の退職でも返金不要です。適切な申請手続きにより、転職活動の経済的支援として有効活用しましょう。