離職票は、失業保険を受け取るために欠かせない書類です。しかし、その「書き方」次第で、受給開始の時期や給付額に大きな差が生じることがあります。特に、離職理由や賃金に関する記載が不正確だと、損をしてしまう可能性もあるため注意が必要です。
この記事では、離職票の構成や記載欄ごとのチェックポイント、記載ミスへの対応方法までをわかりやすく整理しました。制度を正しく理解して、損をしないように備えましょう。
離職票1・2の役割と本人が確認すべき欄

離職票には「離職票-1」と「離職票-2(正式には離職証明書)」の2種類があります。それぞれの役割は異なり、両方の内容が失業保険の受給に必要です。
離職票-1の役割
離職票-1は、主にハローワーク側が手続きに使用するための書類で、以下のような情報が記載されています。
- 基本情報(氏名・住所・被保険者番号など)
- 退職日と離職理由(事業主の証明あり)
- 雇用保険被保険者であった期間
- 備考欄(再就職手当希望の有無など)
本人の署名欄も含まれており、「離職理由を確認して納得した」という意思を示す重要な欄となります。
離職票-2(離職証明書)の役割
離職票-2は、退職理由の詳細や、離職前6ヶ月間の賃金、賃金支払い基礎日数などを証明する文書です。こちらは主に、受給資格の有無や給付額の計算根拠として使われます。
本人が特に確認すべき欄
企業が作成する書類とはいえ、離職票の内容を最終的に確認し、問題がないかを見極めるのは本人の責任です。
次の3点は、失業保険の受給条件や金額に大きく関わるため、必ずチェックしましょう。
- 離職理由欄(離職票-1・2):自己都合か会社都合かによって、給付開始までの期間や支給日数が大きく異なります。
- 賃金支給内訳欄(離職票-2):直近6か月間の基本給や残業代などが正しく記載されているかを確認しましょう。
- 賃金支払基礎日数(離職票-2):月11日以上の勤務がカウント対象です。不足していると受給資格を満たせないことがあります。
また、離職票のコピーを自身で保管しておくことも重要です。後からトラブルになった場合、訂正や申し立ての根拠になります。
記載ミスでトラブルになる例と修正の流れ
離職票は、企業が記載・発行するため、内容に誤りが生じることがあります。
離職理由の誤記や、賃金・日数の記載ミスは、失業保険の支給条件や給付額に直結する重要な問題です。
誤った情報をそのまま提出してしまうと、後から訂正するのが難しくなるため、早期の確認と対応が欠かせません。
よくある記載ミスとその影響
- 離職理由が実際と異なる
- 賃金額が過少に記載されている
- 賃金支払基礎日数が不足している
これらのミスがあると、受給が遅れる・減額される・資格そのものが喪失するという深刻な事態につながるおそれがあります。
訂正の基本的な流れ
離職票の記載ミスに気づいたら、以下の手順で対応しましょう。
- 会社に連絡して訂正を依頼する
- 訂正されない場合はハローワークに相談する
- 給与明細や契約書などの証拠を提出する
会社との関係性や円満退職を重視するあまり、「多少の違いなら…」と訂正を求めずに済ませてしまう人も少なくありません。
しかし、失業保険の給付は生活の大きな支えになる制度です。企業の記載ミスによって本来受け取れる金額や支給期間が損なわれないよう、遠慮せず適切に行動することが重要です。
「離職理由欄」の書き方次第で受給条件が変わる
離職票の中でも特に重要なのが「離職理由欄」です。記載内容によって、失業保険の給付開始時期や支給日数が大きく変わるため、注意が必要です。
ここでは、「自己都合」と「会社都合」の違いによって何が変わるのか、記載ミスがある場合の対応について詳しく解説します。
「自己都合」と「会社都合」の違いと影響
離職票に「自己都合」と記載されるか、「会社都合」と記載されるかによって、失業保険の給付開始時期や支給日数に大きな差が生じます。
特に、自己都合退職では「7日間の待機期間」に加えて、原則1ヵ月間の給付制限が設けられるため、支給開始が大幅に遅れてしまいます。
離職理由によって、支給までの流れが大きく変わる点には注意しましょう。

支給日数や制度上の扱いについても、大きな差があります。
以下に比較表をまとめました。
▼支給開始のタイミングと給付日数の違い
比較項目 | 自己都合退職 | 会社都合退職 |
---|---|---|
給付開始時期 | 待機7日+給付制限1ヶ月(原則) | 待機7日のみ |
給付日数 | 90〜150日(被保険者期間による) | 90〜330日(年齢・期間による) |
手続きの特徴 | 比較的スムーズ | 離職理由の詳細確認あり |
会社都合退職では、離職理由の根拠となる資料(労働条件通知書、診断書、出勤記録など)を求められる場合があります。
誤記があったときの対応と申し立て方法
離職票の離職理由が実際と異なる場合は、ハローワークに申し立てが可能です。企業が作成した書類でも、記載に誤りがあれば訂正を求めてください。
訂正・申し立ての基本的な流れ
- 会社に連絡して訂正を依頼する
- 訂正されない場合はハローワークに相談する
- 給与明細や契約書などの証拠を提出する
図解を入れる
申し立て時に準備しておきたい書類
- 給与明細
- 雇用契約書
- 労働条件通知書
- 業務日報やタイムカード
- 医師の診断書(体調理由の退職の場合)
証拠となる書類は、1つだけでなく複数そろえておくのが理想です。事実関係を裏付ける内容が多いほど、ハローワーク側の判断もスムーズになります。
賃金・基礎日数欄の記載で変わる給付額
失業保険の給付額は、離職前の賃金と就労日数をもとに計算されます。そのため、離職票に記載される金額や日数に誤りがあると、実際に受け取れる手当が少なくなったり、受給資格そのものを満たさなくなったりすることがあります。
ここでは、給付額に影響する賃金の対象範囲や、基礎日数の注意点について解説します。
どの賃金が対象?賞与や残業代は含まれる?
失業保険の給付額は、退職前6ヶ月間に支払われた賃金をもとに計算されます。具体的には、「賃金日額」と呼ばれる1日あたりの金額を算出し、それに応じて1日分の基本手当日額が決まります。
この「賃金」に含まれるのは、単に基本給だけではありません。残業代や通勤手当なども対象に含まれる一方で、賞与や退職金のように一時的に支給されるものは原則含まれません。
▼ 給付額の算定対象になる賃金・ならない賃金の例
対象になる賃金 | 対象外の賃金 |
---|---|
基本給・残業代・通勤手当・住宅手当 | 賞与・退職金・慶弔見舞金 |
離職票の賃金欄には、企業がこれらの項目を集計して記載しますが、対象期間や内訳を誤って入力してしまうケースもあります。
金額が明らかに少ない・手当が反映されていないと感じたときは、支給明細などと照らし合わせて、早めに確認するようにしましょう。
基礎日数の注意点と受給資格への影響
失業保険を受け取るには、「一定の期間、雇用保険に加入していた」という要件を満たす必要があります。この判断に使われるのが、離職票に記載される賃金支払基礎日数です。
雇用保険の受給資格を満たすための基準
- 原則として、離職日からさかのぼって2年のうちに、賃金支払基礎日数が12ヵ月以上あること
- 1ヵ月あたり11日以上勤務している月のみがカウントされる
- 例外的に「特定理由離職者」などは6ヵ月以上で受給資格を得られるケースもある
基礎日数が足りないと、失業保険を受給する資格そのものを失うおそれがあります。たとえば、勤務日数の少ないアルバイトやパートで月10日以下しか働いていない月が続いた場合、基準を満たしていてもカウント対象から外れることがあります。
また、産休・育休や病気による休職などで出勤日数が少ない期間がある場合も注意が必要です。
まとめ
離職票は、失業保険の支給時期や金額を左右する重要な書類です。特に離職理由や賃金、就労日数の記載に誤りがあると、本来の手当が減額されたり、受給できなくなる可能性があります。
企業が作成する書類であっても、記載内容を確認し、納得して提出するのは本人の責任です。誤記に気づいた場合は、企業への訂正依頼やハローワークでの申し立ても検討しましょう。
退職後の支援を正しく受けるために、離職票の内容を確認し、適切に対応することが大切です。