再就職手当は、失業手当の受給中に次の仕事が早く決まった人がもらえる制度です。ただし、タイミングや条件を間違えると「満額(70%)」を逃すこともあります。
この記事では、支給率が変わる仕組みから、満額を確実にもらうための条件・手続き・注意点までをわかりやすく解説します。制度を正しく理解すれば、再就職を前向きに進めながら、もらえるお金をしっかり受け取れます。
再就職手当の仕組みと「満額支給」の基本を理解しよう
再就職手当を満額で受け取るためには、まず制度の全体像を理解することが欠かせません。
ここでは、支給率が70%になる条件や、支給額がどのように決まるのかを見ていきましょう。
満額とは?支給率70%と60%の違い
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再就職手当は、失業保険(雇用保険の基本手当)の受給資格がある人が、早めに安定した職業に就いた場合にもらえる再就職促進手当です。本来、失業保険は失業中の生活を支えるために少しずつ支給されますが、制度を使えば、残りの手当の一部を前倒しで一括でもらえます。
この手当の支給率は、一般的に70%(満額)または60%(一部)のいずれかです。
どの支給率が適用されるかは、再就職が決まった時点での「失業手当の残り日数(支給残日数)」によって決まります。
| 支給率 | 支給残日数の条件 | 支給額の目安 |
|---|---|---|
| 70%(満額) | 所定給付日数の3分の2以上残 | 最大額を受給できる |
| 60%(一部) | 所定給付日数の3分の1以上〜3分の2未満 | 一部のみ支給される |
支給残日数が所定給付日数の3分の2以上残っていれば、満額である70%の支給率が適用されます。
つまり、早く再就職を決めるほど多くの手当を受け取れる仕組みです。
支給額の計算方法と具体的なシミュレーション
再就職手当で実際にいくらもらえるかは、次の式で算出できます。
支給額=基本手当日額 × 支給残日数 × 支給率(70%または60%)
例えば、基本手当日額が6,000円で、90日分の支給日数が残っている状態で再就職が決まったとします。
この場合、残日数が全体の3分の2以上なら満額の70%が適用されます。
計算例:6,000円 × 90日 × 0.7=378,000円
このケースでは約38万円が一括で支給されます。もし支給率が60%になると324,000円に減少します。
また、支給額には年齢ごとに設定された基本手当日額の上限があり、その範囲内で計算される点にも注意が必要です。
満額をもらうための3つの条件チェックリスト
再就職手当を満額でもらうには、いくつかの「共通条件」をすべて満たす必要があります。この条件を見落とすと、70%ではなく60%支給になったり、最悪の場合は支給されないことも。
ここでは、審査で特に重視される3つのポイントについて解説します。
1年以上の雇用見込みがあること
まず、新しい就職先で「1年を超えて勤務する見込みがあること」が大前提です。雇用形態(正社員・契約社員・パートなど)は問われず、長期的に安定した雇用であることが求められます。
判定の基準となるのは、入社後に提出する「採用証明書」や「雇用契約書」です。契約期間が1年未満でも「更新の見込みあり」と記載されていれば、対象と認められる場合があります。
所定給付日数の3分の1以上が残っていること
再就職手当を受け取るには、失業保険を受け取れる「所定給付日数」の支給残日数が少なくとも3分の1以上残っている必要があります。
満額(70%)を目指す場合は、この残日数が「3分の2以上」残っている時点で再就職を決めるのが理想です。
自分の残日数は「雇用保険受給資格者証」で確認できます。
7日間の待機と失業認定後の再就職であること
離職票を提出して申請すると、最初の7日間は「待機期間」となり、その間は失業手当が支給されません。再就職手当の対象となるのは、この待機期間が満了した後に決まった再就職です。
また、自己都合退職の場合は7日間の待機に加え「給付制限」があります。2025年4月以降の離職では、この給付制限が原則1か月に短縮されました。この期間中の再就職も対象になりますが、条件が厳しくなるため注意が必要です。
| 条件 | 満たさない場合の扱い |
|---|---|
| 雇用見込み1年以上 | 契約書などで確認。期間が短いと支給対象外の可能性あり |
| 支給残日数が3分の2以上 | 満額ではなく60%支給になる |
| 待機期間が終了している | 待機期間中の就職は支給対象外 |
特に、「更新上限あり」などの文言があると、1年以上の雇用見込みがないと判断されることがあるため要注意です。
入社日と申請タイミングで満額を逃さないコツ
条件を満たしていても、入社日や申請タイミングを間違えると不支給になるリスクがあります。特に「いつ就職したか」「いつ申請したか」は、満額支給の可否を左右する重要ポイントです。
再就職のスケジュールを立てる際は、次の3つのタイミングをしっかり押さえておきましょう。
給付制限中はハローワーク紹介経由が安全
自己都合で退職した場合、7日間の待機の後に原則1か月の給付制限期間が設けられます(2025年4月以降の制度)。ただし、離職理由によっては2か月となるケースもあるため注意が必要です。
この期間中に再就職した場合、再就職手当の支給を確実に受けるには、ハローワークや許可を受けた職業紹介事業者の紹介経由での就職が最も安全です。
自己応募でも対象になる場合はありますが、ハローワークが「早期再就職の促進に資する」と判断しない限り不支給になる可能性があります。そのため、自己応募の場合は事前にハローワークへ相談し、求人を登録してもらったうえで紹介状を発行してもらうのが確実です。
紹介状やメール記録などは後日確認の証拠になるため、必ず保管しておきましょう。
入社日と失業認定日の関係を押さえる
入社日は、再就職手当の支給可否を左右する重要なポイントです。「就職日の前日までの失業の認定を受けていること」が条件となります。
つまり、内定が出たら速やかにハローワークへ連絡し、入社日の前日までを失業期間として最終認定してもらう必要があります。この手続きを行うことで、残日数を最大限に残し、70%の満額支給を目指せます。
申請は入社日から1か月以内が期限
再就職手当の申請は、入社日から1か月以内に行うのが推奨されています。これは法律上の「時効」ではなく、行政上の実務的な期限目安です。
雇用保険法では、支給の原因が生じた日の翌日(就職日の翌日)から2年以内と定められています。ただし、1か月を過ぎると理由書の提出が求められる場合があり、審査が長期化するため注意が必要です。
申請の流れは次のとおりです。
- 会社に「採用証明書」を記入してもらう
- 「再就職手当支給申請書」に記入
- ハローワークに提出(郵送・代理可)
新しい仕事が始まると忙しくなるため、書類は早めに準備し、1か月以内の提出を心がけましょう。
書類ミス・契約内容の不備で減額を防ぐチェックポイント
再就職手当の申請は、制度の理解よりも「書類の正確さ」でつまずく人が多いのが実情です。わずかな記載ミスや契約文言の違いが原因で、減額・不支給になるケースも少なくありません。
ここでは、審査でチェックされやすい書類上の注意点と、誤りを見つけたときの正しい対処法を解説します。
採用証明書・雇用契約書にあるNGワード例
ハローワークは、提出書類をもとに「1年以上の雇用見込み」を判断します。
次のような文言が含まれると、対象外と見なされることがあります。
- 「更新上限あり」「最大2回まで更新」
- 「試用期間終了後に本採用を決定」
- 「週の所定労働時間が20時間未満」
試用期間が記載されているだけでは不支給にはなりませんが、「本採用を改めて判断」とされている場合は注意が必要です。また、修正依頼を行う際は、再発行した書類をハローワークに提出することを忘れないようにしましょう。
離職票や基本手当日額の誤りを見つけたときの対処法
再就職手当の支給額は、基本手当日額をもとに算出されます。
離職票や受給資格者証の内容に誤りがあると、支給額に影響する可能性があります。
| ミスの内容 | 連絡先 | 対応方法 |
|---|---|---|
| 離職理由が事実と異なる | 前職またはハローワーク | 訂正申立書の提出 |
| 基本手当日額の計算ミス | ハローワーク | 賃金資料をもとに再計算依頼 |
特に離職理由が「会社都合」か「自己都合」かで受給条件が大きく変わるため、受給資格者証の内容は必ず確認してください。
まとめ
再就職手当を満額(支給率70%)で受け取るには、いくつかのポイントを意識しておくことが大切です。まず、支給残日数を3分の2以上残した状態で再就職を決めること。そして、1年以上の雇用見込みがある契約内容にしておくことが重要です。さらに、入社日は「失業認定後」に設定し、1か月以内に申請手続きを完了させましょう。
これらの条件を事前に確認しておけば、もらえるはずの手当を逃すリスクを防げます。もし書類の準備や申請方法に不安がある場合は、ハローワークへの相談や専門サポートの利用も検討してみてください。制度を正しく理解し、損せず安心して新しいスタートを切りましょう。



