退職を決めたものの、さまざまな手続きを前にして「何から始めればいいのだろう」と不安を感じていませんか?特に会社から「どの書類を」「いつもらえるのか」が分からないと、失業保険の申請や次の職場への提出が間に合うか心配になります。
これらの書類は今後の生活に欠かせないものであり、もらい忘れや遅れは避けたいところです。書類の受け取り方や時期を正しく把握しておけば、退職後の手続きもスムーズに進められます。
この記事では、退職時にもらう書類の種類と受け取るタイミング、届かない場合の対処法をわかりやすく解説します。
退職時にもらう書類と受け取り時期をまとめて確認

退職時には、会社から複数の書類が発行されます。これらは失業保険の申請、転職先での入社手続き、税金や社会保険の申請など、生活に欠かせない役割を担います。
まずは、退職当日に受け取る書類と、退職後に郵送される書類に分けて全体を確認しましょう。
退職当日に受け取る主な書類
退職日当日は、会社から次のような書類を直接受け取ります。
最終出社日が退職日と異なる場合は、後日郵送になることもあります。
▼主な書類とポイント
- 雇用保険被保険者証
失業保険の申請や転職先での雇用保険加入手続きに必要。
紛失時はハローワークで再発行できます。 - 年金手帳(または基礎年金番号通知書)
令和4年4月以降は「基礎年金番号通知書」で交付されていますが、従来の年金手帳もそのまま有効。会社に預けていた場合は、退職時に必ず返却を受け取ってください。
最近では退職代行サービスを利用したり、最終出社をせずに退職手続きを完結させたりするケースもあります。
その場合は、これらの書類が後日郵送で届くことが一般的です。事前に会社と送付先や返却方法を確認しておきましょう。
退職後に郵送で届く書類
退職後に自宅へ郵送される書類は、失業保険や税金の手続きで特に重要です。
代表的なものは「離職票」「源泉徴収票」「健康保険資格喪失証明書」です。
▼主な書類と到着時期の目安
- 離職票(雇用保険被保険者離職票)
失業保険の申請に必要な書類。会社は退職日の翌日から起算して10日以内に、離職証明書をハローワークへ提出する義務がある。 - 源泉徴収票
給与分・退職金分ともに1か月以内の到着が目安。 - 健康保険資格喪失証明書
国民健康保険への切り替えに必要な書類。会社によっては本人から発行依頼が必要な場合も。 - 退職証明書
労働基準法第22条に基づく書類で、労働者の請求があれば会社は発行義務あり。
転職先や再就職の際に提出を求められることがある。
参考:厚生労働省「雇用保険被保険者離職証明書についての注意(PDF)」
参考:国税庁「給与所得の源泉徴収票等の交付義務」
参考:日本年金機構「健康保険の資格喪失証明等が必要になったとき」
参考:e-Gov法令検索「労働基準法第22条」
届かない・遅れているときの対処法
「離職票が届かない」「源泉徴収票がまだ届かない」といったケースも少なくありません。
目安期間を過ぎても届かない場合は、以下の順に確認しましょう。
- 会社の人事・総務担当に連絡し、発行状況を確認する。
事務処理の遅れや郵送トラブルの可能性もあるため、まずは丁寧に確認します。 - 対応がない場合は公的機関へ相談する。
離職票⇒ハローワーク、源泉徴収票⇒税務署が相談窓口です。 - 税務署では「源泉徴収票不交付の届出書」を提出できる。
会社に対して行政から督促してもらえます。本人確認書類などが必要になるため、事前に確認しましょう。
自己都合・会社都合で変わる書類と注意点
退職時にもらう書類の中でも、「離職票」の退職理由欄は特に重要です。
内容によって、失業保険の給付条件や支給時期が大きく変わります。
参考:厚生労働省「基本手当について」
離職票の「退職理由欄」で変わる手続きの違い
離職票には、退職理由として「自己都合」か「会社都合」が記載されます。
この違いによって、ハローワークでの手続きや給付内容に次のような差が生じます。
| 項目 | 自己都合退職 | 会社都合退職 |
|---|---|---|
| 給付制限 | 約1か月※ | なし |
| 待機期間 | 7日間 | 7日間 |
| 給付日数 | 90日~150日 | 90日~330日 |
| 特徴 | 支給開始まで約1ヶ月の待機が必要 | 退職後すぐに受給開始可能 |
※2025年4月の制度改正により、自己都合退職の給付制限期間は原則3か月から1か月へ短縮されました。ただし、過去5年以内に3回目以降の離職がある場合など、一部は2か月となります。
離職票の内容が事実と異なると、本来受けられる給付を逃すおそれがあります。届いたら必ず退職理由欄を確認し、自分の認識と一致しているかチェックしましょう。
参考:厚生労働省「令和6年雇用保険制度改正(令和7年4月1日施行分)について(PDF)」
記載ミスや不当な理由があった場合の修正方法
離職票の記載内容に誤りがある場合は、ハローワークで修正を求めることが可能です。
手続きは次の順で行いましょう。
- 離職票を確認し、事実と異なる箇所を特定する。
- 会社の担当者に訂正を依頼し、再発行してもらう。
- 会社が応じない場合は、ハローワークで「異議申立書」を提出する。
⇒ハローワークが会社と本人の双方から事情を確認し、事実関係をもとに最終判断します。
この申立ては失業保険の申請前に行うのが望ましいです。給付開始が遅れるのを防ぐためにも、早めの対応を心がけましょう。
もらい忘れを防ぐためのチェックリスト
退職時の書類は種類が多く、もらい忘れや手続き漏れが起きやすいものです。
ここでは、受け取り忘れを防ぐチェックポイントと、郵送・リモート退職での注意点を紹介します。
後から慌てないよう、事前に確認しておきましょう。
退職時のチェックポイント一覧
退職時にもらう書類は、どれも今後の手続きに欠かせないものです。一部でも不足があると、失業保険や健康保険、確定申告などが滞るおそれがあります。
まずは、最低限そろえておくべき書類を確認しましょう。これらが手元にあれば、主要な手続きはスムーズに進められます。
▼主なチェック項目
- 離職票 … ハローワークに提出(失業保険の申請用)
- 源泉徴収票 … 税務署または転職先に提出(年末調整・確定申告用)
- 健康保険資格喪失証明書 … 市区町村役場で使用(国保切り替え用)
- 雇用保険被保険者証 … ハローワークや転職先で使用(再加入用)
これらの書類は発行先や到着時期が異なるため、チェックリストを活用して受け取り状況を管理しておくと安心です。
特に「離職票」や「源泉徴収票」は会社から自動的に届くとは限らず、依頼が必要なケースもあります。もし届かない場合は、会社に問い合わせて発行状況を確認しましょう。
郵送・リモート退職で注意すべき点
出社せずに退職手続きを行う「郵送退職」や「リモート退職」が増えていますが、対面での確認がない分、書類の受け渡しトラブルが起きやすいのが実情です。
特に住所変更や返却方法のミスが多いため、以下の点に注意しましょう。
- 引越しを伴う場合は、必ず新住所を会社に伝える。
退職後の書類は旧住所宛に郵送されることが多く、転送届を出していても届かないケースがあります。 - 書類は簡易書留やレターパックなど、追跡できる方法で送る。
健康保険証などの個人情報を含む書類は、普通郵便では紛失時に追跡ができません。 - 会社からの郵送物も不在票を見逃さないよう注意する。
社名入り封筒で届くことが多く、受け取りが遅れると手続きに支障をきたす場合があります。 - 不明点は早めに人事・総務担当へ連絡する。
「届くはずの書類が来ない」「返却先が分からない」といった不安は、放置せず確認を。
郵送やリモートでの退職は便利ですが、最終的な責任は本人にあります。
送付先や受け取り方法を事前に確認し、確実にやり取りできるよう備えておきましょう。
まとめ
退職時にもらう書類は、勤務を終えるためのものではなく、新しい生活を始めるためのスタート地点です。離職票・源泉徴収票・健康保険証などを正しく受け取り、次の手続きを滞りなく進めることが、安心した再出発につながります。
書類のもらい忘れや記載ミスは、失業保険や税金の手続きの遅れにつながることもあります。この記事で紹介したチェックリストや確認手順を活用して、必要な書類を確実に受け取りましょう。
正確な情報と計画的な準備が、退職後の不安を軽減し、スムーズな再スタートを後押ししてくれます。



